イクラ・毛ガニ…北海道産が次々高騰の「謎」 地球規模の「レジームシフト」が影響?

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近年、不漁続きで高値になっている大衆魚は秋サケだけではない。サンマは2016年の全国漁獲量が1977年以来最低となり、2017年は11月末現在で前年同期をさらに3割強も下回っている。今年のサンマの平均卸値は3年前に比べ6割近く高い。

「サケが減るとニシンが増える」と言われるとおり、数の子の価格は安定している(記者撮影)

サンマ不漁の確たる原因は不明だが、やはり地球規模の気候変動や温暖化による資源量の減少や回遊ルートの変化が指摘される。公海における台湾、中国など外国船による漁獲量増大も一部に言われるが、全体に与える影響は限定的のようだ。

毛ガニの卸値は3年前比で倍

スルメイカの漁獲量も2016年は30年ぶりの低水準を記録。2017年も減少が確実だ。不漁の原因の1つと考えられているのが、産卵場所である東シナ海の海水温の低下。寒冷化と温暖化は表裏一体と言われ、海域によって影響が異なるようだ。公海上での外国船の過剰漁獲も指摘されるが、正確な統計がないためはっきりしない。2017年のスルメイカの平均卸値は3年前に比べやはり5割以上高い。

秋サケもサンマもイカも北海道の主要な水産物だが、北海道名産の高級食材である毛ガニもますます“高嶺の花”となっている。2017年の卸値は3年前比でほぼ倍だ。背景にはやはり記録的不漁があり、北海道周辺の海洋環境の変化が原因と見られているが、確証はない。北海道庁漁業管理課に聞くと、「原因が究明されないことには対策が打てない。漁業者も原因がわからないので、不安でしかたない状況だ」という。

一方でイワシやニシンなど豊漁の魚種もある。「サケが減るとニシンが増える」「スルメイカが不漁だとイワシが豊漁」といったように、気候変動のレジームシフトによって魚種ごとの資源量も大きくシフトするとも言われる。

だが、その正確なメカニズムは解明されていない。四方を海に囲まれた水産資源大国ニッポンとして、今後こうした気候変動と水産資源量との関係についての研究を後押しするとともに、人為的な環境変化である地球温暖化の是正に向けた取り組みを強化する必要があるだろう。 

中村 稔 東洋経済 編集委員
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