イクラ・毛ガニ…北海道産が次々高騰の「謎」 地球規模の「レジームシフト」が影響?

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秋サケの来遊数が減少したのはここ1~2年だけの話ではない。2000年代以降を見ても、2004年(全国計7665万尾)から10年以上にわたって減少傾向をたどっている。こうした長期的趨勢についてはどう考えればいいのか。

サケの生態学的研究の第一人者である北海道大学国際連携機構の帰山雅秀・特任教授は、「『レジームシフト』と呼ばれる地球規模の気候変動と、人間活動による地球温暖化が相乗効果となってここ20年ほどのサケの生活史と生残率に影響を及ぼしているのではないか」と分析する。

1990年代末ごろを境に、アリューシャン低気圧の勢力減退などによって北太平洋の大気と海洋条件が新たな「レジームシフト」を起こし、サケの生育にとってマイナス方向に転換した。また、近年の温暖化によってオホーツク海など日本近海の海水温が上昇し、サケの回遊ルートや生残率に影響を与えているという見方だ。ただ、「気候変動とサケの生活史や生残率との関係は、すべてが解明されているわけではない」(帰山氏)。まだまだ謎が多いのだ。

2018年の来遊数は改善の期待

2018年のサケの来遊数がどうなるかも確たることは言えない。ただ、「2017年の3年魚の来遊数から予測すれば、2018年は改善する期待が持てる」と藤原氏は言う。成魚の中心である4年魚のサケの来遊数は、前年の3年魚のサケの来遊数からある程度推定できる。3年魚の来遊数は2016年が平成以来最低だったが、2017年は平年並みに増えており、2018年には4年魚の来遊が平年並みに戻る可能性が高いというわけだ。ただ5年魚は期待薄とされ、大幅な回復とはいかないかもしれない。

北海道庁ではサケの不漁に対し、老朽化したサケの孵化施設を改修したり、天然ハーブ成分を入れた餌を与えて病気になりにくい稚魚の放流を促進したりするなどサケ増殖に向けた対策を打っている。だが、自然環境の変化が主因と見られるため、対応に苦慮しているのが実情だ。

道内では人工孵化施設などで、いけす内のサケの腹が割かれ、卵だけ盗まれる事件も相次いでいる。イクラの価格高騰が背景にあると見られ、北海道さけ・ます増殖事業協会では監視カメラを設置するなど盗難防止策を強化している。

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