中国工業地帯を襲う「天然ガス不足」の深刻度 厳しい環境対策の"副作用"が顕在化

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また一部の地域では、暖房に必要なガスボイラーがまだ設置されていない住宅もある。

今回の天然ガス化計画は、中国がこの冬、鉄鋼などの汚染産業の生産を減らし、ディーゼルトラックの利用を削減する中で実施された。環境汚染対策によって経済成長が阻害されるのではとの懸念も出ている。

河北省の企業経営者や住民、ガスなど公共事業者に対する取材によって、こうした問題が浮き彫りになり、多くの都市でこの問題に対処する用意がないことが示された。北京に隣接する河北省で操業する工場は、冬に首都を頻繁に覆う大気汚染の元凶とみられている。

今年は工場を4カ月しか稼働できなかった

河北省で小さな床タイル工場を営むXue Huabingさんは、新たな環境規制に従ったため、今年は工場を4カ月しか稼働できなかったと語る。

人口1000万人を擁する省都・石家荘市に近いXueさんの工場生産は、環境検査のため数回停止させられ、夏には新たなガスボイラー設置のため操業を停止したという。

石炭から天然ガスへと燃料を転換し、9月に操業再開したものの、10月にはガス価格の高騰によって再び生産停止に追い込まれた。

「ガス価格は、立方メートルあたり6─7元(104─121円)で、同2元だった昨年から上昇した」とXueさんは言う。「稼働すれば、赤字操業になる」。天然ガス供給を確保すること自体も困難だったと、Xueさんはロイターとの電話取材で語った。

中国内のガス供給取引用オンラインサイトmarket.yeslng.comによると、国内の液化天然ガス価格は11月中旬以降、7割以上跳ね上がり、1トンあたり8000元を超える記録的高値を付けた。

価格高騰は、石家荘市や保定などの産業都市における生産コストを膨らませ、その影響が下流の卸売業者や小売業者にも波及していると経営者は話す。

大気汚染の原因となる工場を減らそうと、以前に行われた生産抑制策が、原材料供給を直撃していると、業界関係者は言う。

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