脳卒中や心筋梗塞の発症「ゼロ」にするには?

30代・40代からやっておく方が断然いいコト

「血圧は病院で測るもの」が常識だった時代から、家庭での血圧測定を提唱し「家庭血圧」を根付かせてきたオムロン ヘルスケア。そんな同社が血圧事業のコンセプトに掲げているのが、高血圧に起因する脳・心血管疾患の発症をゼロにする「ゼロイベント」だ。健康で充実した人生を楽しめる人を1人でも増やすための取り組みはいかにしてスタートしたのか。オムロン ヘルスケア社長である荻野勲氏に話を聞いた。

高血圧に起因する脳・心血管疾患が増加

家庭用血圧計において世界トップシェアを誇るオムロン ヘルスケア。1973年に血圧計を発売して以来、現在までに世界110カ国以上に展開、世界シェアは約46%に達している。同社を率いる荻野勲社長は、これまでの家庭血圧普及への取り組みについて次のように語る。

オムロン ヘルスケア
代表取締役社長
荻野勲

「私が入社したのは1985年ですが、当時は家庭で血圧を測ること自体まだ広まっていませんでした。ただ、私どもには、自分の健康は自分自身で管理しなければならないという考えがあった。いくつかある健康指標の中でも、血圧を選んだのは、高血圧が重大な疾病との関連性が高く、疾病発症のリスクを知ることができる指標だからです。また、針などを使わずに誰でも手軽に測定できたということも大きかったです。私たちは、使いやすい機器の開発に加え、世界の第一線で活躍する医療関係者や研究機関の家庭血圧に関するプロジェクトに参画するなど、家庭血圧の普及に注力してきました。これらのプロジェクトから導き出された家庭血圧における高血圧の基準値が、世界保健機関(WHO)をはじめ、世界各国の高血圧ガイドラインに明記され、世界でユーザーを獲得することができたのです」

日本だけでなく世界で高齢化が急速に進展する中、高血圧はその存在感を増している。高血圧患者は世界で約10億人、日本でも約4300万人いると言われる。「患者数は、今後さらに増加すると言われています。私どもの肌感覚ですが、食生活が豊かになるだけでなく、クルマの普及率の上昇など生活習慣が大きく変わることも高血圧患者の増加に影響すると考えています。中国、インド、ロシア、ブラジルなど新興国でも生活が豊かになるにつれ患者数が増加しています。また、アジアなど20~30年前は感染症が死因のトップでしたが、衛生面の改善などにより感染症が減って平均寿命が上がり、高血圧に起因する脳・心血管疾患の発症が増えているのです」(荻野氏)。

高血圧の恐ろしさは、ほとんど自覚症状がないものの、放っておくと脳卒中や心筋梗塞、心不全などの脳・心血管疾患の大きな原因になることだ。たとえ一命を取り留めたとしても、寝たきりになったり、後遺症が残ることも多く、日常の生活の質を著しく低下させ、本人だけでなく、家族にとっても介護などの大きな負担を招いてしまう。日本人の平均寿命は男女ともに80歳を超えているが、厚生労働省の調査によれば、日常生活に制限なく健康に過ごせる「健康年齢」は、平均寿命よりも男性で約9年、女性では約12年短くなっている。その原因の一つが脳・心血管疾患による寝たきりや後遺症なのだ。また、こうした平均年齢と健康年齢のギャップの拡大が医療費や介護給付費の増加にもつながっているという。

出所:平均寿命:厚生労働省「平成25年簡易生命表」 健康寿命:厚生労働省「平成25年簡易生命表」「平成25年人口動態統計」 「平成25年国民生活基礎調査」総務省「平成25年推計人口」より算出
出所:厚生労働省「平成25年国民生活基礎調査」 ※最重度の介護を必要とする状態

「オムロン ゼロイベント チャレンジ」開始

そうした中、オムロン ヘルスケアは、健康寿命を伸ばすため、脳・心血管イベントと呼ばれているような重篤な疾患、たとえば、高血圧に起因する脳卒中や心筋梗塞といったイベントの発症をゼロにすることを目指した「ゼロイベント」を事業コンセプトに掲げ、取り組んでいる。ゼロイベントを始めることになったきっかけとは何か。

「私どもは、商品を企画するときに、なぜその商品をつくるのか。そのミッションを一つひとつの商品に持たせようとしてきました。血圧計のミッションは、血圧計を作って売ることではなく、血圧を下げてコントロールすること。つまり、高血圧の患者さんを重篤化させないということをミッションにして商品やサービスを考えてきました。そんな中、患者さんの実態をより知るために介護やリハビリの現場にも立ち会う中で、涙を流しながら懸命にリハビリに取り組んでいる脳・心血管疾患の患者さんたちや、それを支えるご家族の姿を見て、やはり脳・心血管イベントの発症をなくさなければならない。そう強く感じ、イベントをゼロにするためのゼロイベントの取り組みを始めたのです。いまでは、医療関係者からも賛同を得て、ゼロイベントという言葉を使ってくださる先生もいらっしゃいます」(荻野氏)。

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