年金13万円、生活苦に悩む高齢者たちの実情

生活保護を受けることすらできない

このため、本来もらうべき年金額よりも多くもらっていた受給者は適正額に戻すために、2013年10月から1%、翌14年4月からさらに1%減額され、2015年4月にも0.5%下げられた。

「もらいすぎ」が解消されれば、物価や賃金が上昇すると、その分年金額も上がることになる。その伸びを抑える役割を果たすのが、「マクロ経済スライド」だ。2015年度、厚生年金を受け取る夫婦二人世帯のモデル世帯は、前年度より4453円プラスの月22万3519円もらえるはずだった。ところが実際の受給額は月22万1507円。マクロ経済スライドにより、2012円減った。しかし、この額はあくまでもモデルであり、年金受給者3991万人のうち、約4分の1が生活保護の基準以下で生活する”隠れ貧困層”といわれる。自営業で国民年金にしか加入していなかった人や、フサエさんのように長年働き続けていても低賃金だったために、支払われる年金額が少なかった人もいる。

そんな”隠れ貧困層”を直撃するのは、2016年末の臨時国会で成立した「年金カット法案」だ。現在導入されている「マクロ経済スライド」は、デフレ下では発動されないため、将来的な物価上昇の見通しが立たない現状では、年金支給額の抑制が厳しい。そこで、デフレ下でも年金の支給額を抑制できるように、「物価と賃金の低いほうにつねに合わせて年金を下げる」という仕組みを盛り込んだ改正国民年金法が2021年4月から実施される。

2016年12月下旬、厚生労働省が公表した試算によると、物価上昇率が1.2%、経済成長率が0.4%のケースでは、高齢者への年金支給額は新ルールを導入しない場合と比べて2026年度から2043年度まで0.6%減る。民進党が公表した試算では、国民年金は年間4万円、厚生年金は同14万円も減るという恐ろしい結果が出ている。今、ぎりぎりで生活している高齢者たちは、生活が立ち行かなくなるのは目に見えている。

「おカネがなければ死ぬまで働け」

一般的に会社を定年退職したあとに、健康保険組合から国保に移る。年齢とともに病院に通う人が多くなるので、高齢者の加入率が高い国保は、その分保険料を上げないと医療費を賄えない構造になっている。国保の負担増も高齢者にとってかなりの痛手だ。

東京都に住むシンジさん(仮名、67歳)も年金カットと国保の負担増で悲鳴を上げている高齢者の1人。現在、年金を受け取りながら運送業のアルバイトで生計を立てている。

「アベノミクスの影響で、株で儲かった人もいるようですが、私たちには関係ない話だね。年々、仕事が減って、最近の手取りは年100万円程度でした」(シンジさん)

シンジさんの年金は年間約60万円。長年、自営業を営んでいたため厚生年金はない。60代で店を畳み、アルバイトをはじめた。同い年の妻は腎臓が悪く、定期的に病院に通い人工透析を受けている。ほとんど寝たきりの状態で要介護度は2番目に重い「要介護4」。排泄は自力でなんとかできても、家事は一切できないため、シンジさんが妻に代わって一切を行っている。そして、ひきこもりで働くことができない娘(30代)の3人で暮らしている。

妻の年金はすべて妻自身の医療費に消える。所得税と住民税は非課税に該当しても、年13万円の国民健康保険料の支払い義務はあった。

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