マンデラの右腕は「腐敗の国」を変えられるか ANCのラマポーザ新議長を待つ試練

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しかしこれは、単純な経済的イデオロギーの問題ではない。世論調査によると、一般の南アフリカの国民が最も関心を寄せているのは、ズマ大統領の取り巻きであり、後援者であるグプタファミリーに関する腐敗の実態だ。同家は入札案件や、大臣の指名・更迭などを通じて、数十億ドルの恩恵を不正に受けたとされている(ズマ氏とグプタファミリーともこの疑惑を否定している)。

こうした中、次期大統領と目されるラマポーザ副大統領は、少なくとも一般的な国民の視点から対処しなければならない3つの課題がある。

ラマポーザ副大統領が直面する課題

1つ目は、ズマ大統領の任期を2019年の選挙までと認めるかどうか、あるいは、ズマ大統領の前任者、タボ・ムベキ前大統領がそうしたように、ズマ大統領をリコールするかどうかを決めなければならない。ここれで歩み寄りがあるとすれば、ズマ大統領が自ら辞任し、大統領恩赦により、同大統領が訴えられることを避けることである。

2つ目に、ラマポーザ副大統領は、汚職をめぐる裁判でのズマ政権による控訴や、裁判官による批判をやめ、裁判所を支援する姿勢を明確に表すべきである。また、憲法裁判所で命じられた公費の横領に関する調査委員会を監視するために、信頼できる裁判官を至急任命しなければならない。

3つ目に、反腐敗の立場をしっかりと取らなければならない。新しいANC執行部では、たくさんの「外科手術」を行う必要があるだろう。

これこそが、ラマポーザ副大統領の最大の課題になるに違いない。あるアナリストが今回の選挙後に述べたように、マンデラ氏のANCは今や、「道徳上完全にヒビが入っている」。しかし、ANCは依然として、アパルトヘイトから民主主義をもぎ取った政党のままなのだ。そのレガシーは、今後数年間権力を維持するのには十分かもしれない。この国で権力の座についていた指導者たちが、しおらしくなって政治の世界を去って行くのを当てにしてはいけない。

著者のウィリアム・サウンダーソン‐マイヤーは南アフリカのライター。このコラムは同氏個人の見解に基づいている。
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