日本で「シュトレン」が人気化した納得の事情 作り手にとっては「1年の集大成」だった

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また、少子化や、働く女性が増えたことで、クリスマスが大人同士で楽しむイベントに変化してきたことも、背景にあると思われる。何しろシュトレンの種類は豊富で、価格も安いもので1本1000円台、高いものになると7000円近くのものもあるなどバリエーション豊か。各店舗が技術を追求し、見た目や味わいの違う商品を出しており、その違いを楽しむ大人たちがブームを盛り上げているといえるだろう。

クリスマスまでの期間に食べるというイベント性の高さも見過ごせない。この時期になると、百貨店などでもシュトレンを売る店を多く見掛けるが、小売側の視点で見ると、クリスマスケーキまでの期間を「埋められる」商品としてのポテンシャルが高い。

シュトレンは「ありがたい商品」

では、作り手側は、どういう考えのもと作っているのだろうか。

話を聞くべく、東京・渋谷区で人気の「カタネベーカリー」にお邪魔した。同店でも、シュトレンは2、3年前から非常によく売れるようになり、今年は発売を開始した11月2週目から、かなり早いペースで売れているという。

『毎日のパン』の共著書もあるオーナーの片根大輔氏は、開店した2002年から毎年作るシュトレンを「1年間の集大成」と位置づけ、「毎年工夫しながら味を変えている」と話す。使う小麦粉やドライフルーツの種類を変えたり、フルーツを漬け込む期間を変える。バターの種類や使い方も変える。

1年間積み重ねた技術や考え方を、製造に反映させる。また、他店のシュトレンを取り寄せ、毎年スタッフと食べ比べて味を研究。経験の蓄積を年の終わりに投入するという意味で、集大成なのである。

同店では、パンに割高な国産小麦粉を使うが、山食パンの「パンアングレ」1斤280円と、価格は抑えめだ。「それでもシュトレンは単価が高いので、売れると1日の売り上げがいきなりボンと上がる。ありがたい商品です」と片根氏は話す。

「売り上げを取ろうと、攻めている店は多いと思います。パッケージにも麦の穂を使う、箱に入れるなどして高級感を演出している店もある。1年に1回のことだからそれを喜ぶお客さんもいるし、贈答用にもできる」

次ページ作るのには、とんでもない手間がかかっている
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