フェイスブックの株価は、なぜ高騰したのか “弱み”だったはずの「モバイル広告」が急拡大

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岩下氏がフェイスブック広告ならではの成功事例として挙げるのが野菜通販のオイシックス。オイシックスのユーザーデータベースとフェイスブックのユーザーデータベースをマッチングし、フェイスブックから適切な広告を表示する、というものだ。最近購入していない会員に対して購買を促す広告を打つなどして、ROASは500%を達成したという。

そのほか携帯電話会社では、もう少しで2年契約縛りが終わりそうなユーザーに対し、新しい端末を紹介する広告を打つなどの試みが始まっているという。「ダイレクトメールを送ったとしても、ほとんど読んでもらえないためROASは低い。ニュースフィード広告の場合には、記事を工夫することで自然な形で読んでもらうことができる」(岩下氏)。

利便性とのバランスがカギに

とはいえ、広告主の利便性ばかりを追及して広告枠を極大化してしまえば、ユーザーが離反する可能性がある。そのため、ユーザーが利用を止めることがないよう、適正な広告の表示の仕方を常にテストをしているという。「ニュースフィードへの広告の数には一定の上限を設けている。広告内容についてはガイドラインを設けておりモニタリングにより違反している広告はシャットアウトしている。またユーザーからの申告があれば、モニタリングチームが個別にチェックしている」(岩下氏)。

プライバシー保護との兼ね合いにも注意をしているという。登録したプライバシー情報に基づいて広告が届くため、「○○大学を卒業した△歳のあなたへ」などの広告が届くと自分のプライバシーが広告主に伝わっているのではないか、と不安に思うユーザーも多いだろう。しかし、「プライバシー情報はフェイスブック内で厳重に管理されている。広告主などの外部に出すことは絶対にない」(岩下氏)ということだ。

 そうであったとしても、表れる広告をみて不快感を持つユーザーも多いだろう。広告が邪魔にならないようにしつつも、確実に見てもらわなければ広告としての価値がない。その微妙なバランスを維持しつつ成長を続けることができるかどうか。フェイスブックのマネタイズへの挑戦はまだ緒に就いたばかりだ。
 

山田 俊浩 東洋経済 記者

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やまだ としひろ / Toshihiro Yamada

早稲田大学政治経済学部政治学科卒。東洋経済新報社に入り1995年から記者。竹中プログラムに揺れる金融業界を担当したこともあるが、ほとんどの期間を『週刊東洋経済』の編集者、IT・ネットまわりの現場記者として過ごしてきた。2013年10月からニュース編集長。2014年7月から2018年11月まで東洋経済オンライン編集長。2019年1月から2020年9月まで週刊東洋経済編集長。2020年10月から会社四季報センター長。2000年に唯一の著書『孫正義の将来』(東洋経済新報社)を書いたことがある。早く次の作品を書きたい、と構想を練るもののまだ書けないまま。趣味はオーボエ(都民交響楽団所属)。

 

 

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