アフリカは「資本主義の限界」を見抜いている 日本人がアフリカ思想から学べることは多い

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ジンバブエの携帯電話ショップの様子(写真:ロイター/アフロ)

若林:1人で何かをしてはダメという話は、人間が不完全な存在、欠如した存在であるという認識があったから。その感覚はとてもいいものだと思います。

僕はイヴァン・イリイチという思想家を、仕事でもずいぶん参考にしています。これは僕の理解ですが、人間とは不完全な存在であり、古くは農耕器具などのツールを通じて、自然との一体性を取り戻すべきだというイリイチの主張があります。彼の言葉に「コンヴィヴィアリティ」(自立共生)というのがあります。自分たちが生きている環境に適合して、いかに自立自存していくか、大きい権威やインフラに依存するのではなくて、自分がいる環境の中で、いかに自分の手足を使って生きていくかが大事なのではないでしょうか。

1960年代にヒッピーが出てきて、スティーブ・ジョブズも影響を受けた『ホールアースカタログ』の中でも「ツール」というのは重要なんです。近代社会でまな板の上の鯉にされている僕らが、自分たちの手で自分たちの生を取り戻す思想は、シリコンバレーのテクノロジーにも流れ込んでいます。ジョブズにとってのPCとは、自分の手でクリエーティビティを生かす道具でした。人間は不完全な存在であり、ツールを通してもう一度世界とやり取りができるのではないでしょうか。

山田:それは、小さな単位でものづくりを行おうとするメイカーズムーブメントともつながっていますね。

アフリカには最新テクノロジーが普及している

若林:アフリカでは電気のインフラがなく、ソーラーはとても重要です。つまりいまはやりの分散型テクノロジーを使って、自分たちの環境に適応しています。リープフロッグは最近ビジネスでよく使われる言葉ですが、つまりは一足飛びに最新テクノロジーが導入されることです。

たとえば、ナイジェリアは映画産業が大きくて、1990年代にハンディカムが手に入りやすくなって、映画を撮り始めるけど、映画館というインフラがなくて、いきなりDVDに焼いてディストリビューションしたそうです。さらにデジタルネットワークが入ると、そこから一気にネットフリックスに行く。ケニアでも「M-PESA(エムペサ)」というモバイル送金サービスがものすごく普及しています。

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