「ベートーヴェン」と「第九」の知られざる真実 思わず人に話したくなる蘊蓄100章

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41. 酒好きとしても知られ、特にハンガリーのトカイ周辺地区で生産される安価なトカイワインを愛したという

42. 一説にはそのワインの摂取量は日に3Lともいわれ、過度なアルコールが彼の健康を害した一因でもある

43. 慢性的な腹痛や下痢も抱えていたが死後に行われた解剖では肝臓、腎臓、脾臓など多臓器に損傷がみられた

44. 1995年ベートーヴェンと交流のあった指揮者フェルディナンド・ヒラー所有の遺髪がオークションに出品

45. その遺髪を米国のベートーヴェン協会が落札し、最新の技術を用いた科学的分析が行われた

46. 結果、ベートーヴェンの遺髪から通常の100倍近い鉛が検出され彼が慢性的な鉛中毒であったことが判明

47. 腹痛や下痢、癇癪やうつ症状も鉛の影響と考えられるが、どんな経緯で鉛に汚染されたかは特定されていない

48. ひとつには、当時ワインの甘味料として使用されていた無色透明な結晶である〈酢酸鉛〉の過剰摂取

49. また肝障害を起こしたベートーヴェンが1826年1月頃から受けていた腹水治療の影響という推測もある

50. 彼の聴覚障害の原因も定かではなく、鉛中毒説や耳硬化症説、先天性梅毒説など複数存在している

『交響曲第5番(運命)』の誕生

51. しかしベートーヴェンが亡くなったあとも、彼の音楽が後世の音楽家たちに与えた影響は計り知れない

52. 幼少時から彼を尊敬していたワーグナーは「ベートーヴェンの第9をもって交響曲は終わった」と語っている

53. ベートーヴェンはオペラや演劇のための音楽からピアノ曲、交響曲、管弦楽、吹奏楽など幅広く作曲した

54. 難聴に悩まされる以前、デビューしたての頃は古典派様式に忠実な明るく活気ある作品を書いていた

55. 当時20代という若さもあるが、師匠ハイドンやモーツァルトの強い影響を受けていたともいわれている

56. その後1802年に精神的危機に陥った彼はウィーン古典派の形式を再発見することでそれを乗り越えていく

ナポレオン(写真:YNS / PIXTA)

57. 従来のソナタ形式を拡大したり、旋律の元となる動機やリズムの徹底操作、楽章の連結など革新的技法に挑戦

58. こうして生み出された1804年以降の中期作品群は古典派の様式美とロマン主義を高次元で両立させていた

59. 中期の名作『交響曲第3番(英雄)』はナポレオンの偉業をきっかけに1804年に制作された

60. そして1808年にはベートーヴェンの代表作ともいえる『交響曲第5番(運命)』が誕生する

次ページ交響曲のなかで唯一、彼自身によってつけられた標題
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