“夢の治療法"再生医療は、「産業」に育つか 17年目の黒字が見えた、J-TEC小澤洋介社長に聞く

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開発戦略は15年前にできていて、ひとつの方向性として、まずはからだの表面、次に体の中ということでは、まずは皮膚、次に軟骨に取り組もうと決めて、そのとおりにやってきた。

もうひとつの方向性として、同種移植は市場が大きく、良質な細胞を使える。だが、日本では承認が取りにくいだろうと考えた。「他人の細胞を商売にしていいのか」という倫理観や宗教観の問題が出てくる。日本や欧州では他人の細胞をおカネで買ってはいけないことになっている。ただ、米国や韓国では認められており、儲かっている会社がいくつもある。

富士フイルムと連携して海外事業に乗り出す

――富士フイルムとのシナジー戦略は?

資本を入れていただいたときに、2つお約束をしている。ひとつは次世代の再生医療製品を一緒に開発すること。富士フイルムは化学材料をいっぱい持っているので、インプラントに使いたいという希望があった。もうひとつは、事業開発、たとえば海外展開を一緒にやりましょうということ。その中から、経済産業省の公募事業になった中国、タイにおける再生医療実用化プロジェクトの話も出てきた。中国では皮膚科、形成外科の審美治療を目的とした自家培養表皮の提供を、タイではメディカルツーリズムが盛んなので、自家培養軟骨の提供を考えている。

提携して3年以上になるので、そろそろ成果も出したい。富士フイルムからすれば、化粧品事業をやっているので、皮膚には関心が高く、X線フイルムとの関連で整形分野ともかかわりが深い。一緒にできることは多いと思っている。
 

大崎 明子 東洋経済 編集委員

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おおさき あきこ / Akiko Osaki

早稲田大学政治経済学部卒。1985年東洋経済新報社入社。機械、精密機器業界などを担当後、関西支社でバブルのピークと崩壊に遇い不動産市場を取材。その後、『週刊東洋経済』編集部、『オール投資』編集部、証券・保険・銀行業界の担当を経て『金融ビジネス』編集長。一橋大学大学院国際企業戦略研究科(経営法務)修士。現在は、金融市場全般と地方銀行をウォッチする一方、マクロ経済を担当。

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