“夢の治療法"再生医療は、「産業」に育つか 17年目の黒字が見えた、J-TEC小澤洋介社長に聞く

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再生医療のパフォーマンスというのは、50%はわれわれの製品、すなわち「細胞がよい状態にあるか」にかかっているが、残りの50%は「生きた細胞をどうやって運ぶか」という物流、病院の医師の手技、術後のリハビリなどにかかっている。だから、「産業化」のためには、病院や物流も巻き込まなくてはならない。しょせんは業者であるわれわれが、医師も啓蒙していかなければならないので、かなり厳しいことだ。

開発から製造、販売まで一貫して行い、病院を回れる営業部隊を持っているということが当社の特徴であり、潰れていった会社との違いだ。再生医療のみで182人の会社だ。一方、大企業の場合も、再生医療だけをやっている部隊だけを見れば当社ほど人数は多くないと思う。

――15年の赤字を支える資金はどうやって確保したのですか。

私の仕事の半分はおカネを調達することだった。創業時は、ニデックと富山化学、INAX(当時、現LIXIL)、東海銀行グループ(当時、現三菱UFJ)の出資でスタートした。医療機器会社のニデックもJ-TECも父が創業し、今は兄がニデックを、私がJ-TECをみている。ニデックがよく支えたが、ニデックも一時期傾きかけたことがあり、J-TECは重荷だった。そこで、J-TECはベンチャーキャピタルから資本を導入し、株式も上場した。

3年前からは富士フイルムに筆頭株主になってもらっている。株式市況の悪い中で40億円入れてもらい、現在、子会社の富山化学を合わせると持ち株比率は46%になる。

同種移植の開発、美容分野にも意欲

――パイプラインとしては、自家培養角膜上皮に取り組んでいますが、これから広げたい分野は。

高齢化社会の中で、皮膚については、クオリティ・オブ・ライフにかかわる皮膚疾患や美容にも広げて生きたい。これまでは自家培養表皮しかやってこなかったが、同種移植・他家培養(本人ではないが人間の細胞)にも取り組みたい。

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