リーダーの決断 事業拡大・承継にM&A 受け継がれる創業者の想い、後継者の育成

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経営者の高齢化が進む中堅・中小企業の事業承継策として、また、成長企業の事業拡大策として、今やM&Aという選択肢ははずせない。東京、福岡、名古屋、大阪の全国4会場で開催された「経営者フォーラム2017」には、M&Aを活用した事業譲渡を検討している企業経営者やその家族、事業譲受によって業界再編を図りながら事業拡大を目指す企業の経営幹部らが参加した。
主催:東洋経済新報社
協賛:M&Aキャピタルパートナーズ

特別講演(東京・福岡)
ケーズデンキ がんばらない経営

加藤 修一氏/ケーズホールディングス相談役(前代表取締役会長兼CEO)

ケーズデンキの加藤修一氏は「講演は基本的に引き受けないのでIRについて話します」と前置きして、各地の家電販売会社をグループに取り込みながら、着実に成長させてきた同社の資本政策や、経営哲学の「がんばらない経営」について語った。同社は1947年に父親が創業。利益追求で従業員にプレッシャーをかけたりせず、当たり前に顧客の望むことをするという、がんばらない経営で成長してきた。従業員を大切にすれば、接客、取引関係も良くなると、早くから社員持ち株制度を導入して、会社の成長とともに従業員の資産も増やしてきた。加藤氏は35歳で社長に就任。社長引退は50歳と考えていたが、相次ぐM&Aでタイミングを逃したことから、65歳以上は社長になれないというルールを策定。後継については「『まだできる』と思って続けると、『もうできる』人がいる組織がおかしくなる。失敗したらカバーするつもりで、任せることが大事」と語った。

特別講演(名古屋・大阪)
永遠に成長する企業を目指して

豊田 昌洋氏/エア・ウォーター代表取締役会長・CEO

積極的なM&Aで成長を続けるエア・ウォーターの豊田昌洋氏は、出身地・滋賀の近江商人の「三方よし」の精神と、卒業式で当時の瀧川幸辰・京大総長が訓示した「ただ酒は飲むな」を「心に刻んで事業をしてきた」と述べた。豊田氏は、約60年前に産業ガス製造の大同酸素に入社。同社は、同業2社と合併し、2000年に「エア・ウォーター」として発足。その後、M&Aでさまざまな事業領域に進出した。企業の選定については、再建のために1988年に資本提携し、2006年に子会社化したタテホ化学工業が高級電磁鋼板用のマグネシアで世界シェア9割を持つ会社に成長したのを例に「技術などキラリとしたものがあること」をポイントに挙げた。

M&A後の企業統合では、自社グループ事業や、買収等を行った別の会社を組み合わせながら「柔軟な頭と果敢な行動で」シナジーを創出する重要性を指摘。「ただ酒は飲まずに公私を明確に分けて仕事をし、自社も相手も良くなって、世間に受け入れてもらえる三方よしで進めば、会社は成長できる」と述べた。

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