ユニクロが支援する超一流ゴルファーの本意 アダム・スコットは新商品開発までかかわる

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ゴルフウエアとしても活用できる高機能商品を強化することは、中国を中心に攻略し続けている海外ユニクロ事業にとっても、追い風になるといえる。欧米で認知度が高まることが、先行するスペインのインディテックス社「ZARA」や、スウェーデン発祥のヘネス&マウリッツ(H&M)と差別化できる要素となり、苦手ともいえる欧米事業で成長を加速できるカギにもなる。

では、スコット選手が商品開発に深く関わる理由は何か。そこにゴルフの普及に対する問題意識が現れている。

「ゴルフはそもそもプレーにおカネが掛かるのでハードルが高いスポーツだ。そのうえ、価格の高いフォーマルなゴルフウエアでプレーしなければいけないというような先入観がある。それを変えて、低価格でありながら、機能性とデザインを追求した商品を提供していきたい」(スコット選手)

商品開発の話になると、スコット選手の解説は熱が入り、細かなこだわりも教えてくれた(編集部撮影)

トップ選手のスポンサーを通じた宣伝は様変わりする

すでに、米国や欧米での今季のツアーは終了しており、目線は2018年シーズンに向いている。

「松山英樹選手は成長著しいし、私にとってもライバルだ。彼は今後、メジャータイトルを獲得すると確信している。私の場合、2017年はコンディションを整えチャージする年だったと思う。来シーズンはよりよいプレーを重ねて勝ち続けることが目標。いちばん勝ちたいトーナメントを挙げるとすれば、オープンチャンピオンシップ(7月開催予定の全英オープン)だ」

世界的に見ればゴルフ市場の成長性は鈍化していることは課題だ。日本ではゴルフ市場がこの20年あまりで半減している。また、2016年夏にはナイキがゴルフ事業(クラブ、ボールおよびバッグを含むゴルフ用品ビジネス)から撤退を表明しており、名門の「テーラーメイド」も独アディダスから投資ファンドに2017年5月に売却された。トップ選手のスポンサーを通じた宣伝・販促活動における用具メーカーの戦略は様変わりしている。

「私が契約したとき、まわりのプロ選手はユニクロのことを知らなかった。今ではユニクロとの契約をほかの選手はうらやましがっている」とスコット選手は言う。

さらなる長期間のスポンサー契約を結ぶことで関係強化も望むスコット選手。今後ユニクロは、機能性を強化し低価格戦略を続けることに加え、海外のゴルファーからも支持されるブランドとしての確立が必要になる。

菊地 悠人 東洋経済 記者

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きくち ゆうと / Yuto Kikuchi

早稲田大学卒業後、東洋経済新報社に入社。流通・小売業界の担当記者を経て2017年10月から東洋経済オンライン編集部。2020年7月よりIT・ゲーム業界の担当記者に。

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