青函トンネルと新幹線「0系」の意外な関係 世界最長の海底トンネルにまつわる秘密

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この新幹線規格だが、線路幅や車体サイズの違いによるトンネル断面の違いはもちろんのこと、平均勾配を20パーミルから12パーミルに変更する必要があった。では、なぜ12パーミルなのだろうか。

関ヶ原付近を走る新幹線N700A(筆者撮影)

実は東海道新幹線は最急勾配20パーミル、連続平均勾配15パーミルで建設された。その結果、東海道新幹線の関ヶ原付近には連続15パーミルの勾配が続き、さらに20パーミルの勾配も点在している。

国鉄の計画ではこの勾配区間を0系は時速200kmで登れると計算していた。しかし実際には関ヶ原を走行中の0系のモーターが過熱してしまう問題が発生したのだ。

地上の共用区間が長い理由

そのため、山陽新幹線では建設基準を変更し、最急勾配15パーミル、連続勾配を12パーミルとした。この建設基準は整備新幹線にも適用されたため、北海道新幹線を通す計画があった青函トンネルも12パーミルに変更したわけである。

青函トンネルを抜けた新幹線H5系(筆者撮影)

勾配が緩くなったため、出入り口の位置も大きく動き、その結果トンネルの長さが53.85kmに延びることとなった。当然建設費も大幅に上昇している。

また、出入り口が在来線から大きく離れた場所となった。しかし北海道新幹線が開業するまでは在来線を通す計画だったため、新幹線と在来線が近づくポイントまで地上路線も新たに建設。これが現在の新幹線在来線共用区間となっている。

当時の0系の性能から決まった青函トンネルの勾配と長さ。青函トンネルと0系には意外なつながりがあったわけである。

松沼 猛 『鉄おも!』編集長

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まつぬま たける / Takeru Matsunuma

大阪府出身。明治大学文学部卒。株式会社三栄書房に20年間在籍し、編集者として世界各地を飛び回った。2008年12月から『鉄道のテクノロジー』編集長を務めた後、2013年5月に独立。現在は『鉄おも!』編集長のほか、『鉄道ジャーナル』『ニューモデルマガジンX』『カーグッズマガジン』、鉄道、自動車関連ムックなどに執筆。

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