世界の独裁政権に共通するリーダーの挙動 国際社会から批判されても支持率高い国も

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それでも万が一、心の中では加計学園を応援したいと思っていながら安倍首相が1月20日まで本当に知らなかったとすれば、それはやはり安倍首相に対する恐ろしいまでの忖度が働いたことになる。

「忖度」が2017年の流行語大賞に選ばれるかどうかはわからないが、ノミネートは間違いなさそうだ(※編集部注:12月1日に「流行語大賞」に選ばれた)。

「忖度」とは相手の心を推し量ること。安倍首相が口に出さなくても、周囲が安倍首相の気持ちを推し量っていろいろな配慮をする。お友達と思想信条が同じ人とイエスマンで固めた側近政治が2000日以上も続けば、ここまでいってしまうということなのだろう。

世界の独裁者と共通する安倍首相の特異な挙動

私は中曽根元首相に主として外交問題でいろいろアドバイスする機会があったが、同じ長期政権でも中曽根元首相は自分と違う意見の人を必ずキャビネットに入れていた。小泉政権で国家戦略の策定を手伝ったこともあるが、変人の小泉元首相のまわりには異論の人しかいなかった。

今でもよく覚えている。郵政改革のとき、中国の大連で仕事をしていた私の下に国家戦略本部の事務総長だった保岡興治(元衆議院議員)氏から連絡がきた。「もはや孤立無援。党内で郵政民営化を支持するのは私と竹中(平蔵)さんだけ。絶体絶命です」。この後、参院で郵政改革関連法案が否決されて、小泉元首相は郵政解散に打って出る。忖度してくれる仲間がいないから、異論を唱える候補に刺客を送り込む力業で党内を掌握したのだ。

側近で固める安倍首相の政治姿勢は、中曽根元首相や小泉元首相とはまったく異なる。言わずもがなの心遣いといえば日本人の美徳のようで聞こえはいいが、安倍首相に対する忖度はやはり尋常ではないと思う。

忖度する人々が湧いて出てくるのは、実は独裁政権の特徴だ。北朝鮮では金正恩委員長の気持ちを忖度するのに政治家も軍人も一般国民も命を懸けている。間違った忖度をすれば殺されるからだ。

中国も似たようなもので、習近平国家主席の意向をくみ取れない党幹部や役人は次々と粛正されている。習近平の盟友で側近中の側近といわれる王岐山(中国共産党中央規律検査委員会書記。2017年10月の共産党大会をもって退任)氏でさえ一族の腐敗問題で内偵を受けるなど、立場を危うくしている。

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