【産業天気図・食品・飲料】2008年度前半、09年度後半とも曇り、値上げ効果あっても需要動向は微妙

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予想天気
 08年10月~09年3月   09年4月~9月

食品・飲料業界は2008年度後半、09年度ともに「曇り」となりそうだ。ビールやパンなど、原材料高を背景に値上げを実施した業界では、値上げが浸透し増益基調となるため、従来は08年度後半を「晴れ」と予想していたが、依然として原材料高騰懸念がくすぶることや、景況感悪化に伴う消費マインドの冷え込みなどを考慮して予想を「曇り」に変更する。
 
 パン業界では、小麦価格や食用油脂の高騰などを受けて、業界全体で07年12月に続き、08年5月にも価格改定を断行。最大手の山崎製パン<2212>は、単純値上げではなく、既存品に比べて少容量にした製品や、量販店のPB商品を意識した低価格品の発売などで対応した。これまでのことろ、値上げによる消費者離れは限定的で、業績は今08年12月期初見通しより好調に推移しそうだ。

ビール業界も同様だ。今年2月にキリンホールディングス<2503>、3月にアサヒビール<2502>、4月にサッポロホールディングス<2501>、9月にサントリーと、大手4社のビール類の値上げに踏み切った。各社とも、値上げの影響や総市場の縮小により、販売数量は減少するが、利益率は改善し増益となる見込みだ。

対照的に清涼飲料は苦境が続いている。原料高に苦しみながらも値上げに踏み切れず、各社にらみ合いが続いている。今期は天候不順などの影響もあり、コカ・コーラセントラルジャパン<2580>など、コカ・コーラ系列のボトラー各社は相次いで業績の下方修正を発表している。ダイドードリンコ<2590>も08年7月中間期決算発表時に通期見通しを下方修正した。

清涼飲料を除けば、食品業界は利益的には全般的に上向いているとは言える。が、引き続き原材料高の動向が不透明なうえ、ここへきて景気低迷がより鮮明になってきた。今のところ値上げも順調に浸透しているが、今後の景気動向次第ではスーパーなどによるPB商品への乗り換えが加速する可能性もある。少子高齢化などによって市場自体は縮小傾向が続く中、値上げだけでは楽観できない状況が続きそうだ。
【佐藤 未来記者】

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