共働き夫婦は妻の死亡リスクを考えていない 妻に何かあったら夫は子供を抱えて働ける?

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男女の給付の格差を説明する前に、ここで改めて保険料の負担方法をおさらいしておきましょう。会社員が負担する厚生年金保険料は、給与額に応じて支払っています。男性でも女性でも、給与額が同じなら、同額の保険料を負担します。

たまに勘違いされている方もいますが、専業主婦(第3号被保険者)の年金保険料は扶養している夫が負担しているわけではありません。会社員全体(第2号被保険者)で負担しているのです。専業主婦のことを悪くいうつもりはまったくありませんので誤解をしていただきたくありませんが、働く女性は、どこかの誰かの専業主婦の妻の保険料を間接的に負担していることになります。そのうえで、男女の死亡時の保障のちがいを見ていきましょう。

働く妻が亡くなっても夫に「中高齢寡夫加算」はない

男性の会社員が亡くなった場合、遺族基礎年金受給終了時に40歳以上の妻、あるいは夫死亡時に40歳以上で、かつ遺族基礎年金受給対象とならない妻(=子どものいない妻)は、65歳になるまで中高齢寡婦加算が支給されます。

しかし同じ条件であっても、女性の会社員である妻が亡くなった場合、夫には前出の「中高齢寡婦加算」に相当するおカネはいっさい支払われません。中高齢寡婦加算は文字どおり寡婦年金ですから、寡夫には支給されないのです。これは、仮に夫が専業主夫で、家計は妻が主体で支えていたとしても、支給されることはありません。

2014年に遺族基礎年金の受給要件が、「子のある妻」から「子のある配偶者」と変わったことにより、妻を失った後の子育てについては一定の保障が得られることになりました。しかし、子どもが高校を卒業した後、妻が受給していた「中高齢寡婦加算」に相当するものは、夫が受けることはできません。

同様に、遺族厚生年金にも制約があります。遺族厚生年金を受給する第1順位は、配偶者と子となっていますが、遺された妻に年齢要件がないのに対し(夫死亡時30歳未満で子どもがいない場合は、遺族厚生年金は5年間の限定支給です)、夫には「55歳以上であること」という年齢要件がついています。つまり、55歳未満の夫は、もし会社員の妻が亡くなったときに、妻がそれまで支払ってきた厚生年金保険料からいっさい、遺族厚生年金を受け取ることができない(つまり、妻が受け取るはずだった老齢厚生年金の4分の3がもらえない)のです。

次ページ働く妻が先に死ぬと、残された夫には「19歳危機」が訪れる
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