共働き夫婦は妻の死亡リスクを考えていない 妻に何かあったら夫は子供を抱えて働ける?

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実際、会社員の夫が亡くなると、妻には終身の保障が約束されています。これが遺族厚生年金です。遺族厚生年金は、夫が受給するはずだった老齢厚生年金の4分の3です。日本年金機構から送られてくる「ねんきん定期便」を見れば、老齢厚生年金額が記載されていますから、その75%と考えるといいでしょう。

ただし遺族厚生年金には、「厚生年金加入期間300カ月」の最低保証という特例があるので、もし若いご主人が亡くなった場合、実際の老齢厚生年金額よりも多い金額を基に計算されます。遺族厚生年金は、未亡人の妻が再婚しない限り、終身で支給されます(ただし、遺族年金受給は年収850万円未満という要件があります。詳しくは「共働き夫婦が陥りやすい『保険見直しのワナ』」をご覧ください)。

さらに、子どもがいる専業主婦の妻には、遺族厚生年金の上乗せとして、遺族基礎年金が支給されます。対象となるのは18歳までの子どもで、1人であれば年間約100万円、2人であれば年間約120万円です。子どもが高校を卒業すると、妻には中高齢寡婦加算という年金が支給されます。この金額は年間約60万円で妻が65歳になるまで支給されます。中高齢寡婦加算が終了すると、妻は老齢年金を受給します。

2014年に男女格差是正が一部実施されたが…

一方、妻が亡くなったとき、会社員の夫には国からどんな保障があるのでしょうか?

18歳までの子どもがいる場合は、夫に対し遺族基礎年金が支給されます。これは妻が受け取る遺族基礎年金と同じです。この遺族基礎年金は、仮に収入がまったくない専業主婦が亡くなったとしても、夫以上に年収を稼ぐ妻であっても、一緒に暮らしていた夫は「生計維持関係にあった」とされ支給されます。ただしこの場合でも年収850万円要件は適用されますから、夫の年収がこれ以上であれば支給されません。

遺族基礎年金は、遺族保障における男女の格差を是正しようということで2014年4月に改正されました。それより以前は、幼子を遺して妻が亡くなっても、夫には何の保障もありませんでした。

この改正の背景には、時代の変化があったのです。もはや年功序列の時代ではなく、給与がどんどん上がることもありません。雇用環境も悪化するなか、夫1人の稼ぎで家計を支えることも厳しくなり夫婦共働きが増え、妻が亡くなったときの経済的損失が大きくなったことが挙げられます。

しかし、2014年の改正においても、遺族厚生年金には相変わらず条件がついたままとなっており、男女の格差が残りました。

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