(第15回)対策本じゃ身に付かない、「考える力」の鍛え方

(第15回)対策本じゃ身に付かない、「考える力」の鍛え方

福井信英

 ミルトンが書いた「失楽園」は17世紀イギリス文学の最高傑作と言われる。
 堕天し、サタンとなったかつての「輝ける天使」ルシファーが、地獄に堕ちてから始まる壮大な物語は、ファンタジー小説としても一級品だが、リーダーシップについて考えるビジネス書としても、人間について考える哲学書としても読むことができる。
 失楽園の中で、ルシファーは最悪の環境の中で味方を鼓舞し、まとめ上げる理想的なリーダーとして描かれるが、ルシファーの台詞はいちいち考えさせられる。中でも僕が好きなのは、

「それにしても、知ることが禁じられるとは!なぜ、彼らの主は知識を与えることを惜しんでいるのか?知るということが罪であり死であると、どうして言えるのか」
という台詞だ。
 絶対的な存在である「神」の考えに対して、疑念を抱く。考えてみれば途方もない話だ。しかし、ものごとに対して「本当にそうか」と立ち止まって考える、という意味では、ビジネスの世界で今、最も必要とされている、クリティカル・シンキングの原型とも言えるだろう。
 与えられた環境や状況に唯々諾々と従うことは簡単だ。しかし、そこに進化は生まれない。
 教えに背く、ということは罪かもしれないが、ものごとに疑問を持ち、自ら考え、行動することで人は成長し、進化していくのだ。

 さて、本題。成長と進化をもたらす「考える力」を日常、積極的に活用すると面白いし、役立つという話をしたいと思う。

 他社に先駆けて採用活動を行う外資系のコンサルティング会社や金融機関では、様々な「考える力」を問われる問題が出される。物事を論理的に考えたり、物事の本質を捉えたり、問題の構造を図式化したりする問題で、ビジネス用語では、「クリティカルシンキング」「ロジカルシンキング」「システムシンキング」「フェルミ推定」などと呼ばれる。
いきなり面接の場で出されると面食らう問題が多いが、幸いなことに、世の中には「対策本」なるものが出回っている。就活生の中で広く読まれている書籍には、

「ビル・ゲイツの面接試験 富士山をどう動かしますか?」
「Googleの入社試験」
といったものがある。突飛と思える問題であっても、心の準備さえできてしまえば、なんとかなるもの。これから就職活動をされる方は、一度読んでおくと良いかもしれない。
 ただ、これらの本を読むことは、あくまで「思考力を鍛える必要に気付くきっかけ」にはなるが、「思考力」は日々磨いておかないと、実際の面接ではぼろが出てしまう(あなたの面接官は、「あの本を付け焼き刃で読んできたんだな。ププ」と思っているかもしれない!)し、何よりビジネスの現場で役立たない。それこそ、MSNやGoogleで検索すれば、考えなくても簡単に答えが得られる時代だ。だからこそ、「答えがない中、考えることで自分なりの答えを出せる人」が重宝されるのだ。

 しかし、読者の中には「まだ学生だし、なんとなく鍛える場がないなぁ」と思っている人もいるだろう。そんなことはない。思考力を鍛えるケーススタディは世の中の至る所に溢れている。
 読者の皆さんにお勧めしたいのは、新聞や雑誌を通じて知るニュースについて、書かれたことを鵜呑みにせず、もう一歩踏み込んで考えてみることだ。こういった、身近な問題を題材に、問題の本質や構造を自分なりに考える訓練は、コンサルティング会社の新人教育や研修でもよく使われる。

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