半沢直樹もたまげる、究極の「出向先」 大手70社が出資・賛助する、"追い出し部屋"の正体

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(※編集部註:2011年11月、関東雇用創出機構は関西雇用創出機構と統合し、日本雇用創出機構に社名を変更した。以後の表記は日本雇用創出機構に統一する)

松木さんは日本雇用創出機構に「出勤」し、自分の転職先を探す「業務」を続けた。当初の期間だった半年間では決まらず、出向は都度延長された。その前後で、労働問題に詳しい弁護士に、この件を相談していた。そして2012年9月、松木さんは出向命令の無効や損害賠償などを求めて、FSLを東京地方裁判所に訴えた。

「出向命令権の濫用」が争点

争点は、転職を目的とする出向命令に合理性があるかどうかだ。労働契約法は14条において「使用者(会社)が労働者に出向命令を出す権利を、濫用したと認められる場合は命令そのものを無効にする」と定めている。東京地裁での審理は続いており、早ければ2013年内か2014年初めごろには一審判決が下される見通しだ。

秋葉原電気街から程近い場所にオフィスを移した富士電機ITソリューションの本社

松木さんは裁判を起こした後、2013年1月にFSLから出向を解かれたが、自宅待機を命じられ、現在も自宅待機中である。FSLは、その後も松木さんに対して、会社に出入りしている清掃会社への出向や取引先である配送会社への出向を命じたりしており、松木さんを元の職場に戻すことには否定的だ。

東洋経済はFSLの広報窓口である親会社の富士電機に、一連の件について取材を申し込んだが、「係争中の案件のため、この件は取材には応じられない」(富士電機広報)との回答を得ている。

松木さんのケースは最近、大手家電メーカーなどのリストラをめぐり、「戦力外」とされた中高年社員を集め、スキルアップや求職活動をさせているとして、話題になった“追い出し部屋”を想起させる。東洋経済オンラインでも、ソニーの事例として、週刊東洋経済2013年6月23日号掲載記事を、「ソニー『中高年リストラ』の現場」として配信しているので、併せてお読みいただきたい。

ソニーの“追い出し部屋”と指摘された「キャリアデザイン室」と異なるのは、リストラをしようとする企業の内部にそれはなく、外部への出向というアウトソーシングの形態を採っていることだ。これを請け負っている日本雇用創出機構とは、いったい何者なのか。

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