東大で人気化する「アイデア出し」授業の中身 「呪縛」から抜け出す5つの方法

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【誤解4】課題に向き合えばアイデアはよくなる?

世間では、解決策のアイデアが平凡で、最終的なアウトプットが同質化した商品をよく見かけます。これは、明確なコンセプトを定めないままアイデア開発を進めた場合に起こりがちです。競合他社も同じ課題を持っており、解決アイデアも似たものになりがちだからです。

町おこしを例に考えてみましょう。課題に対して1対1解決を図ろうとすると、たとえばこうなります。

•その街ならではの土産がない → 土産となる饅頭を作る
•街のPRのための顔がない → シンボルキャラクターを導入する
•企業が集まらない → 税の優遇などをして企業誘致を行う

もちろん個々の活動は悪いことではありません。しかし、ほかの街も当然ながら似た取り組みをしてきます。その結果、全国どこに行っても似たような街が多くなっていることも事実で、「同質化の罠」に陥るのです。

では、このとき「あたらしいスタートが世界一生まれる町」というコンセプトを立てたらどうでしょうか?

同じ企業誘致でもスタートアップ企業に重点をおいた施策が可能です。土産はよりオリジナリティのある商品を生み出すことができます。シンボルとして新しいことを生むためのフューチャーセンターといった施設を設立するなども可能になります。

これは昨今、世界からも注目されている宮城県の女川町での実際のコンセプトと活動例です。コンセプトを明確にすると、アイデアがそれに従ってさらに大きく広がり、解決策アイデアは競合と同質化しづらいものになるのです。

一見関係なさそうな要素を組み合わせる

【誤解5】この世にない新しいアイデアを見つけたい!

「アイデアとは既存の要素の新しい組み合わせ以外の何ものでもない」

聞いたことのある人も多いでしょうが、ジェームス・W・ヤング(1886〜1973)というアメリカの広告マンが書いた古典的名著『アイデアのつくり方』の中の有名な一節です。

アイデアを組み合わせるには、基となる知識が必要です。だから、知識量はあればあるほどいいのです。

ただし、単に知識があるだけではダメで、一見関係ないと思われる知識を組み合わせる力が必要です。アイデアマンと呼ばれる人たちは、「一見関係なさそうな要素を組み合わせる」という作業が自然とできてしまう人たちなのです。

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