トランプ政権「怒濤の規制緩和」に漂う不安 人事権から伝家の宝刀までフル活用

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かくしてCFPBには、規制擁護派と規制緩和派の局長代理が、同時にトップとなる異常事態が発生した。CFPBの局長には、設立の根拠法である「ドッド=フランク・ウォール街改革・消費者保護法(ドッド=フランク法)」によって、局長代理を指名する権限が与えられている。

一方で米国には、政府機関の長を決める権限を大統領に与えた法律もある。どちらが優先されるかの判断は法廷闘争に持ち込まれているが、裁判所が即座にトランプ政権の決定を差し止めなかったことで、当面はマルバニー局長がCFPBの主導権を握る格好となっている。

あの手この手で規制緩和に着手

トランプ政権がコーデレー前局長の決定に横やりを入れたのは、いよいよ規制緩和に本腰を入れてきたことの表れだ。トランプ政権は、あの手この手で規制緩和に着手している。人事権の活用は、その手段の1つである。

一言で規制緩和といっても、それほど簡単な作業ではない。規制の根拠となる法律は、連邦議会が決める。共和党は上下両院で多数党の座にあるが、上院では野党である民主党の議事進行妨害を止めるだけの票数はない。好き勝手には進められない状況だ。だからといって、行政権限でできることにも限界がある。既存の規制を変えるためには、パブリック・コメントなどを通じた長く煩雑な手続きが必要である。

その点、人事権の活用は、てっとり早く効果が期待できる。新しい規制を検討する速度を緩めたり、運用面から規制を緩和したりできるからだ。実際、CFPBに乗り込んだマルバニー局長は、新規採用や新しい規制の検討を一時的に凍結する方針を発表している。企業と裁判で争っていた係争案件でも、CFPB側に態度の軟化がみられるという。

人事権の活用は、CFPBにかぎらない。金融規制の元締めともいうべき連邦準備制度理事会(FRB)も例外ではない。

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