ぐっちーさん「日本型組織の致命的弱点とは」 大相撲と大企業の不正問題の根っこは同じだ

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ワタクシの場合、それが嫌で外資系という選択肢を取りましたが、それでもそういう噂は多々出ましたし、今の外資系証券会社は日本の「人事村」出身の人がたくさんいますから、うまく転職したとしても多分そういう噂に潰されるでしょう。ニューヨーク採用なら別でしょうが、悪いものを悪いという人は、もう日本の組織(少なくとも大会社)にはいられない、と覚悟をしたほうがいい。

相撲の話で言えば、いつの間にやら、被害者サイドであるはずの貴ノ岩や貴乃花親方が悪者になってしまう、という怖さです。しかも、貴乃花親方に関しては、協会の責任者という立場はあるにせよ、元来自由であるべきメディアが、ある意味「ブラックシープ」である彼を、突然たたき始めたのにはものすごく違和感があります。

「貴乃花親方は協会に無断で被害届を出したのがけしからん」、などというコメントが出ていましたが、これはふざけた話でしょう。例えばセクハラに会った女子社員がそのまま被害届を警察に出したら、なぜ事前に上司に相談しなかったんだ、と言う話と全く同じです。協会の事情聴取に応じないのも当然で、警察が結論を出すまで黙っていなければ協会に先回りされて、先方に有利な供述を固めるに決まってます。

ワタクシは、実際のセクハラ被害にあった女性の相談にも乗りましたが、会社はとにかく自分の身に火の粉がかからないようにするのに必死で、会社に言うべきではなかった、とやはり後悔していました。この貴乃花親方のやり方はどう見ても世間一般では極めて理にかなったやり方です。そこでいや、相撲協会の伝統は…などと言っているようでは論外ですよ。これこそが、日本の大企業にも見られる悪弊なわけです。

いかなる悪習慣でも、仲間の掟を守らなかった奴はあらゆる手段で踏みつぶす、というこれはもうリンチに等しい行為だと思いますが、そういう切り口で取り上げるメディアはまったくといっていいほど、ない。ですので、ワタクシは経験者として、あえてここで書きたいと思います。

悪弊を断ち切るには「上層部の引退」しかない

企業の不正に話を戻すと、一連の事件で最後は部下のせい(部下が勝手にやったこと)にして切り捨てる……東芝のあの規模の粉飾決算を取締役が知らなかった、というなら、それこそガバナンス不足でさっさとクビにするべきでしょう。いい加減、会社を私物化するのはやめたほうがいい。その意味では日本の場合、会社は株主のものである、という原点に立ち返るべきであり、そういう悪弊を断ち切るには上層部、特に65歳以上の人は早く引退するべきでしょう。あなた方が後世に残せる最高の贈り物は「引退」以外にありません。

大体、今の時代に「昔はこうだった」、なんて経験はくその役にも立ちません。まったく時代が違うのです。ワタクシが商社にいたころのできる社員は、とにかく終身雇用ですから、会社のいうことに従順で言われたことを早く、正確にやる、というのが最大の要件。クリエイティビティ(創造性)など誰も要求されていません。

勝手に市場が大きくなっているので、最大限、マンパワーを投入すれば勝手にパイが増えていくわけですから、こんな楽な話はない。しかし、今や逆にそんな社員はなんの役にも立ちません。ですから当然上司の存在はその会社の将来を妨げるだけで、ただ、「秘密保持」のためだけに組織を維持しているような生命維持装置に成り果てている、と言っても過言ではないでしょう。

いまここで変わらないのであれば日本企業に未来はありません。何とかこの辺で引き返してもらうよう、願っておりますが……。

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