人工知能が出す「最適解」が人事担当者を救う 退職率をAI人事で引き下げることができる?

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人工知能が面談シートの文章を読み解き、人間ではつかみきれない社員が抱える悩みや不安をあぶり出す。与えた教師データは、この1年間に実際に退職した500人の面談記録だ。その中から独自の方法で文章の文脈や単語などを解析し、人間にはわからない、文章に隠れている特徴を見つけ出していく。この「テキストマイニング」機能を使い、退職につながりそうな社員をリストアップする。

退職の予兆は数字で示され、数字が大きいほどその可能性が高い。面談シートの内容は、数日でデータ化されるので、ほぼリアルタイムで追加サポートが必要な社員を割り出せる。このスピード感は人工知能ならではのものだろう。

AIが、退職の可能性を数値で指し示す(画像提供:NHK)

人間の答えと異なる「最適解」をどう受け止めるか

ソラスト社でデータ分析を担当している菅野透氏が、人工知能による全国の新入社員の判定結果のリストを特別に見せてくれた。退職の可能性が高い人から1017点、901点……といった具合に示されている。「たとえば」と菅野氏が示したのが、901点の社員だ。面談記録から、「相談に乗ってほしい」という不安が見て取れる。人工知能の判断は確かに「当たっている」と言えるだろう。ところが、1017点と退職の可能性が最も高いと判断された文章は意外なものだった。

「前職がクレーム対応や問い合わせに答える仕事だったので、つい話が長引いてしまう。忙しい時間帯には、短く要領よく話すように心がけているつもりだが、まだまだ甘いような気がする」

この文章を読んだとき、はたして退職につながる強いメッセージがあると思うだろうか。人工知能は、過去の退職者の書いた文章の構成要素と多くの共通点があるというだけで、1000点を超える高い点数を示してきた。しかし、菅野氏はこれこそが人工知能の判断の切れ味だと感じている。「人が気づかないところを示唆してくれる」と、この結果に全幅の信頼を寄せていた。

その後、1017点の社員と面談したところ、確かに退職につながる悩みを抱えていたことが確かめられた。人工知能の判断は正しかったのだ。

現場でマネジャーを務める宮川悠美子さんの元にも担当社員についての判定結果が届いた。

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