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イノベーションを支える理工系高等教育への期待 理工系大学

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日本、そして世界を覆う閉塞感の中で、イノベーションを待望する声はますます大きくなっている。今年4月にソニー副会長から、独立行政法人 産業技術総合研究所 理事長に就任して、公的研究機関の研究開発をリードしている中鉢良治氏に、イノベーションを起こすために必要なこと、理工系高等教育への期待について語っていただいた。
中鉢良治(ちゅうばち・りょうじ)
独立行政法人 産業技術総合研究所 理事長
工学博士。1977年、東北大学大学院工学研究科博士課程修了後、ソニーに入社。99年に同社執行役員に就任、その後、同社の副社長COO、エレクトロニクスCEO、社長、副会長を経て、13年に独立行政法人産業技術総合研究所理事長に就任。

世界の閉塞感打破にはイノベーションが必要

― 民間企業から産業技術総合研究所(産総研)の理事長という立場に移られ、改めて今の日本に何が必要と感じていますか。

中鉢 産業を含めた社会経済が世界的に閉塞状況となり、日本のデフレをはじめ、深い停滞感が生まれています。経済学の側から規制緩和、市場原理導入による競争の促進が図られ、産業界もQCD(品質、コスト、納期)の向上に取り組んできました。
 しかし、閉塞状況から脱することができずにいます。既存の枠の中で行う、競争推進や付加価値向上といった“改善”には限界があります。フィールドを変えてしまうような大きなインパクト、次元の異なるものを創造するためのイノベーションが必要です。

― イノベーションを求める声は以前からありますが、なかなか形になっていないのが実情です。

中鉢 ソニー創業者の井深大さんは「1・10・100の法則」を語っていました。アイデアを出す努力を1とすると、量産化には、その10倍の努力が必要で、利益の出る事業とするには、そのまた10倍の努力が必要、という意味です。今は、研究開発から製品化までの道のりは厳しいので「1・100・1万」くらいになっているかもしれません。それでも、未来を開くため、やり遂げなければならないのです。

社会に役立つ研究は「連携」がキーワード

― イノベーションに向けた研究開発は、どの方向に進むべきでしょうか。

中鉢 専門にこだわった従来の手法で答えが出ていないのですから、異分野の知恵を取り入れる方向に進むべきではないでしょうか。これからの研究開発は「連携」がキーワードになってくると思います。文理(文系と理系)、産官学、異業種、企業間など、さまざまな次元で連携を探る必要があります。たとえば、文系学生と理系学生の比率は大まかに2対1になっていることを考えると、社会のニーズも文理の比率は2対1程度ということになります。イノベーションを起こすのは理系の技術と思われがちですが、世の中の課題は技術的なものだけではありません。イノベーションを進めるには制度や規制の問題を解決して環境を整える必要もあります。産総研の憲章では「社会の中で、社会のために」というモットーを掲げていますが、社会と技術者がともに創造する姿勢、文理の連携は欠かせません。

― 産総研は産学官の連携にも力を入れていますね。

中鉢 つくばイノベーションアリーナでは、産総研と、物質・材料研究機構、筑波大学、高エネルギー加速器研究機構が、産業界と連携して、ナノテクノロジーなどの研究を推進しています。

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