ドイツの政治空白はEUの将来に影を落とす 2017年は予想外の好況、18年はどうなる?

✎ 1〜 ✎ 53 ✎ 54 ✎ 55 ✎ 最新
拡大
縮小

欧州大陸諸国では、選挙結果の判明から新政権の樹立までの政治空白の長期化がしばしば起きている。

多言語・多民族国家のベルギーでは政党間の対立で連立協議が難航し、2010年6月の総選挙から6党による連立協議がまとまるまでに実に1年半という史上最長の政治空白が続いた。スペインは2015年12月の総選挙後の連立協議がまとまらず、2016年6月の再選挙を経て、同年11月に第2次ラホイ政権が少数政権として発足するまで、およそ1年の政治空白があった。今年3月に総選挙を行ったオランダでは反イスラムの自由党が第2党に躍進。第1党となったルッテ首相率いる自由民主国民党とキリスト教民主同盟など3党との連立協議がまとまり、10月に第3次ルッテ政権が発足するまで戦後最長となる7カ月もの時間を要した。

景気に水を差すことはないが、EUの改革を妨げる

政治空白の期間も、選挙前の首相が率いる暫定政権が機能するため、政策が混乱して景気に急ブレーキを掛けるような展開とはならない。スペインは、政治空白が続いた2016年も途切れることなく年率3%を超えるペースでの成長が続いた。オランダも、7カ月の政治空白が生じた2017年に景気拡大のペースが加速、年間の成長率は2007年以来の3%台に乗る見通しだ。ベルギーの場合は、政治空白の終盤に景気が減速したが、原因は内政ではなく、ユーロ圏での債務危機拡大という外圧にある。このときは、外圧が政治空白の終結を促した面もある。

ドイツの政治空白も足元の力強い景気の拡大に水を差すことは考えにくい。現時点では、2017年に続き2018年も2%程度の景気拡大ペースを維持するというのがコンセンサスだ。代表的な景気先行指標であるIfo経済研究所が作成する企業景況感指数は、先行きに対する強気な見方がリードする形で、11月に史上最高値を更新した。90%の回答がFDP、緑の党との連立協議決裂を反映していないが、その後の展開が大きく企業マインドを損なうようには思われない。

次ページEUの改革は待ったなし
関連記事
トピックボードAD
マーケットの人気記事
トレンドライブラリーAD
連載一覧
連載一覧はこちら
人気の動画
日本の「パワー半導体」に一石投じる新会社の誕生
日本の「パワー半導体」に一石投じる新会社の誕生
TSUTAYAも大量閉店、CCCに起きている地殻変動
TSUTAYAも大量閉店、CCCに起きている地殻変動
【田内学×後藤達也】新興国化する日本、プロの「新NISA」観
【田内学×後藤達也】新興国化する日本、プロの「新NISA」観
【浪人で人生変わった】30歳から東大受験・浪人で逆転合格!その壮絶半生から得た学び
【浪人で人生変わった】30歳から東大受験・浪人で逆転合格!その壮絶半生から得た学び
アクセスランキング
  • 1時間
  • 24時間
  • 週間
  • 月間
  • シェア
会員記事アクセスランキング
  • 1時間
  • 24時間
  • 週間
  • 月間
トレンドウォッチAD
東洋経済education×ICT