ユニクロ、絶好調の秋商戦に潜む一抹の不安 「感謝祭」でシステム障害発生、対策が急務に

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結果的に感謝祭は好調だったとはいえ、今回の事態はファーストリテイリングが成長戦略の柱の一つに掲げるネット通販拡大の面で大きな課題を残した。柳井正会長兼社長は、国内ユニクロの売上高に占めるネット通販の売り上げ構成比率を中長期的に30%へ引き上げる方針を表明している。

ただ、8月末時点における国内ユニクロのネット通販比率は6%。同じアパレル企業のユナイテッドアローズの18%(9月末時点)や、アダストリアの15.7%(8月末時点)と比べても低い水準だ。国内のアパレル市場は、「ZOZOTOWN(ゾゾタウン)」を筆頭に、ネット通販の取扱高の伸びが著しい。

脆弱なネット対策の改善が課題

ファーストリテイリングの柳井正会長兼社長は中期目標としてネット販売比率を30%に引き上げる方針を表明している(撮影:梅谷秀司)

こうした状況下で、ユニクロはコンビニでの購入商品受け取りサービスの導入や、オンライン限定商品の拡充など、ネット通販の強化に向けた手を打ってきた。

前2017年8月期は当初、ネット販売の売上高を年間で40%引き上げる計画を打ち出した。しかし、昨年から稼働した有明の大型物流倉庫がうまく機能せず、翌日配送が出来ないなどといった混乱が発生。その結果、ネット通販の売上高(487億円)の伸び率は15.6%にとどまった。

現在は有明倉庫の物流機能も改善しつつあるが、ネット販売の拡大を掲げる以上、物流面とシステム面双方での強固なインフラの整備が急務となる。アパレル業界に詳しいアナリストは「アリババは11月11日の大セール日(独身の日)に1日で約3兆円の売り上げを出してもサーバーダウンしなかった。ユニクロは『情報製造小売業』という目標を掲げる割に、ネット対策が脆弱すぎる」と指摘する。

今2018年8月期も海外ユニクロの成長を軸に、過去最高益を見込むファーストリテイリング。柳井会長は「日本企業なので日本で稼がないことには始まらない」と強調する。ネット通販におけるトラブルを回避し、成長を継続させることができるか。足元の好調な業績にうつつを抜かしている暇はなさそうだ。

真城 愛弓 東洋経済 記者

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まき あゆみ / Ayumi Maki

東京都出身。通信社を経て2016年東洋経済新報社入社。建設、不動産、アパレル・専門店などの業界取材を経験。2021年4月よりニュース記事などの編集を担当。

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