10代援交女子が「死にたい」から抜け出たワケ 「死に方教えます」DMを受け取った少女たち

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「気を紛らわせられるところっていうか、ストレス発散の場所かな? 私には、なんだかんだでいろんな逃げ場所があった。ネット以外にも、友達の家とか、親戚のいとこの家とか。1人で自分を支えきれなくなったら、そこに行った」

加えて、親に直接ストレスをぶつけていた。

「うちには安らぎがないんだよ!」「なんで(私は)おまえたちの子どもなんだよ!」

そう叫んだこともあった。

「今は親にひどいことを言ったなあって後悔している」と女性はか細い声で言う。でも、親に自分の心の叫びを訴えられたから、「死に方教えます」の場所に行かずに済んだのではないだろうか。

「死にたい」とつぶやいたことのある中高生に話を聞くと、自分の親に本音を言えないでいる子が実は多い。

正面からぶつかったのがよかったんじゃない? 彼女にそう尋ねると「そう思う」とうなずいた。

3年の担任にも感謝している。成績の落ちた女性のために、行ける高校をほかの先生と一緒に探してくれた。

「お仕事」を終了させたのは…

そして、あることをきっかけに「お仕事」を終了させる。

高2の秋。いつものようにツイッターのDMにオファーをもらい交渉した。相手はかなりお金持ちに見えた。

「車持ってるから迎えに行くよ。金額はそちらに任せるよ」。上客に違いない。「じゃあ、10万円で」と返すと「OK」ときた。

「うわ、すごい! めっちゃ稼げるじゃん」

ウキウキしながら指定されたコンビニの駐車場に行くと、車の中から出てきたおじさんに「はい、警察行こうね」と言われた。サイバー補導されたのだった。

迎えに来てくれた母親は「帰るよ」のひと言だけで、何も聞いてこなかった。なぜ「帰るよ」のひと言だけだったのかわからなかったが、「私のところに帰っておいで」という意味だったと今ならわかるという。

「母親もいろんなこと経験してて、娘である私のことをわかってくれたのかなと思う」

それ以来、援交はやめた。同時期に彼氏ができた。補導される以前に援交で出会い、交際が始まった。「今度はちゃんとした仕事をしよう、と思った」。

現在、両親は離婚調停中。「今でも、苦しいって思うときもある」。ただ、今は、自分は1人じゃないと思える。

「本当はみんな死にたくなんかない。そこ(ツイッター)でつぶやくのは、誰かに見てほしい。大丈夫?と言って心配してほしいか、もしくは私のように書くだけでほっとする人もいる」と女性は言う。

誰にも遠慮せずに「私、死にたい!」「死にたいほどつらい!」と叫べる場所が、彼らには必要なのだ。

島沢 優子 フリーライター

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しまざわ ゆうこ / Yuko Simazawa

日本文藝家協会会員。筑波大学卒業後、広告代理店勤務、英国留学を経て日刊スポーツ新聞社東京本社勤務。1998年よりフリー。主に週刊誌『AERA』やネットニュースで、スポーツや教育関係等をフィールドに執筆。

著書に『世界を獲るノート アスリートのインテリジェンス』(カンゼン)、『部活があぶない』(講談社現代新書)、『左手一本のシュート 夢あればこそ!脳出血、右半身麻痺からの復活』(小学館)など多数。

 

 

 

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