トヨタ、「異例ずくめ」の新人事に透ける焦り 自動車産業の大変革期をどう生き抜くのか

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トヨタが今年の東京モーターショーに出展した「コンセプト・アイ」は人工知能(AI)を搭載。電動化や自動運転の広がりで、自動車メーカーにはよりスピーディーな経営判断が求められている(撮影:鈴木紳平)

トヨタは電気自動車や自動運転の開発をグループで進めるが、競争が激しい中、「一段の再編が視野に入っている」(グループ会社首脳)との見方も出ている。

また、高岡工場副工場長の三瓶潔氏など生産現場の計3人を常務理事に起用するなど、現場を重視する豊田社長の信念が大きく出た。

内規違反でも副社長を登用

一方、副社長は4人から6人に増員する。中でも異例となるのがデンソー副会長で69歳の小林耕士氏の起用だ。トヨタで人事・経理畑を歩み、2003年にデンソーへ移っていた。

小林氏はトヨタの内規で定める副社長の年齢上限65歳を大きく上回る。ただ名古屋商工会議所副会頭を務めるなど、政官界とのパイプが太く、今年4月からはトヨタの相談役も兼務。豊田社長のかつての上司で「守り役」との評判だ。

同じく豊田社長が役員になる前からの付き合いがある友山茂樹専務役員も副社長に昇格する。コネクティッドカンパニーなど2カンパニーのトップに加え、事業開発本部など3本部の本部長も兼務するなど業務範囲は広く、社長との信頼関係の強さが表れている。

反面、米国から帰国し今年就任した永田理副社長はわずか半年で退任する。トヨタ関係者は「優秀で社長にもはっきり物申す人だった」と話すが、同じ財務担当ラインの大竹哲也専務役員などとともに一新される。

トヨタ有力OBは「“お友達人事”が増えている印象。社長周辺にイエスマンばかり増えないか心配だ」と話す。こうした批判には結果で応えるしかない。後継者育成も含めて、豊田社長の手腕が問われる。

冨岡 耕 東洋経済 記者

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とみおか こう / Ko Tomioka

重電・電機業界担当。早稲田大学理工学部卒。全国紙の新聞記者を経て東洋経済新報社入社。『会社四季報』編集部、『週刊東洋経済』編集部などにも所属し、現在は編集局報道部。直近はトヨタを中心に自動車業界を担当していた。

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