「退職金で投資デビュー」は老後破綻への道 「長く働いた自分へのご褒美」は大間違い

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確かに、そう勘違いするのも無理はありません。

もともと退職金のルーツは江戸時代の「のれん分け」です。「のれん分け」というのは、長年働いた奉公人に屋号の使用許可といくばくかの開業資金を与えて独立させる仕組みで、これが現代の退職金につながってきているからです。

「現代の退職金は、給料の後払い」と言える理由

したがって退職金には、もともと功労報酬的な意味合いがありました。しかしながら、現代の退職金は決して長年働いたことに対するご褒美ではありません。

退職金の本質、それはひとことで言えば「給料の後払い」です。その証拠に、企業会計上においては、退職金や企業年金のことを「退職給付債務」と言います。そう、給料の後払いだからこそ、会社が社員に対して負っている債務ということになるのです。

ですから、中にはその債務を持ちたくないと考え、退職金という制度をなくしてしまい、その分を在職中の給料に上乗せして払うという「退職金前払い制度」を採用している会社もあります。

前払いというと、一見いいように思えるのですが、実はいろいろと問題があります。前払いの場合、給与として支払われますから当然、所得税がかかります。

これに対して退職金は一時金でもらうと、勤続年数と支給金額にもよりますが、ほとんど税金がかからない場合が多いのです。前払いには、もっと大きな問題があります。それは前払いでもらってしまうと、よほど強い意志でしっかりと管理しないかぎり、もらった分だけ使ってしまうことになりかねないということです。

したがって退職するまで会社がそのおカネを管理し、退職後に渡すという仕組みはある意味合理的であり、よく考えられた制度と言ってもいいのです。

では、この退職金を「ご褒美」と勘違いしてしまうと、いったいどんなことが起きるでしょうか。

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