春日部「駅高架化」で衰退を食い止められるか 最近は近隣の越谷・三郷・八潮に押されがち

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新越谷駅前には「スターバックスコーヒー」や「ドトールコーヒー」といったカフェ、「ロッテリア」、「ミスタードーナツ」、「モスバーガー」といったファストフード店があり、駅と直結するビル「新越谷ヴァリエ」には学生や若い人の姿が目立つ。一方で春日部駅前には「タリーズコーヒー」と「ケンタッキーフライドチキン」くらいしかなく、駅ビルもない。

春日部駅周辺の連続立体交差化と駅周辺再開発が完成すれば駅近くの商業開発や若者向けのカフェ・ファストフードの進出が進む。そうすることで春日部駅の魅力は向上してくるはずだ。

また、連続立体交差化にはにぎわいの創出だけではなく人口減少の改善の期待もかかる。さいたま市と東京都心部のどちらにも出やすいという大きな魅力がある。実際、春日部駅から歩いて25分ほどかかる大沼4丁目には真新しい住宅が並ぶ。グラウンドの売却で生まれた土地にマンションと住宅が立ち並び、2010年以降、この地区に限れば、人口は大きく伸びた。

地域の人々のつなぎとめも必要

また、春日部駅近くの商業地の跡地には新しいマンションがいくつか立ち始めており、こちらも人口が増えている。そこへ春日部駅周辺の連続立体交差化や再開発といったプロジェクトが活発に行われれば、住みたい街としての春日部の魅力が向上する可能性は大いにある。

春日部市も、居住先として選んでもらうための“シティセールス”に取り組んでいる。自然環境や教育を中心に「子育てに適したまち」という点をアピールする。しかし、越谷、三郷、八潮など近隣の勢いがある都市に対してはどうしても印象がかすんでしまう面は否めない。

地域の人々を春日部につなぎとめることも重要だ。東京に出やすいとはいえ、やはり東京都心から1時間圏の端になる春日部は苦戦を余儀なくされている。つまり、就職や結婚といったタイミングでより東京都心に近いところへ出ていってしまう可能性が高いのだ。そのため、地域に住む若年層への魅力アピールも必要だ。

連続立体交差事業という器の準備はできた。あとはその完成までに人口流出をどこまで食い止めることができるか。腰を据えた取り組みが必要だ。

鳴海 侑 まち探訪家

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なるみ ゆう / Yu Narumi

1990年、神奈川県生まれ。大学卒業後は交通事業者やコンサルタントの勤務等を経て現職。「特徴のないまちはない」をモットーに、全国各地の「まち」を巡る。これまで全国650以上の市町村を訪問済み。「まち」をキーワードに、ライティングをはじめとしたさまざまな活動を行っている。最新の活動についてはホームページ(https://www.naru.me/)やX(旧・Twitter、https://twitter.com/mistp0uffer)で配信中。

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