「食べ放題」「飲み放題」の"損得"を考えてみた 一体どうすれば元を取れるのか?

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逆に、サワーやチューハイ、ハイボールを飲むお客は、お店にはありがたい存在だろう。そう考えると、ビールは乾杯だけのサービスにしてもらい、その後はビール抜きの飲み放題でいいから、その分料理を充実させてくれという交渉はアリかもしれない。

30分間飲み放題は安いのか

イベント性を高めた飲み放題もある。定額を支払って、何種類もの日本酒やワインを注ぎ放題で楽しめるというものだ。知らなかった銘柄との出合いを楽しむ体験型飲み放題とでも言おうか。

このようなスタイルのうち、30分刻みでカウントするワイン飲み放題を体験してきた。300円を切る値段で、数十種類のワインを自由に飲める。自分で注ぐスタイルなので、グラスに好きなだけ注いでもいいし、少しずつ味わいながら全種類に挑戦してもいい。

1時間、2時間など飲み放題にする時間を自分で決めてスタートするのだが、ひとまず1時間にしたので、ワイン代は600円以内に収まるはずだ。この場合、人間の心理として、とにかくたくさんの種類を飲もうと考える。筆者も最初は一定の量を注いでいたが、それだとグラスを開けるまで時間がかかるため、3杯目あたりからはグラスに2口で飲み切れる量にした。1時間でなんとか10種類の銘柄を味わい、終了。注ぎに行く時間を1杯につき2分としてそれを差し引くと、着席して飲んでいる時間は1杯当たり4分となる。これは忙しい。正直、お酒をじっくり楽しむという気分にはならなかった。

ただ、30分刻みというシステムには錯覚を起こさせる効果がある。通常の飲み放題が2時間とすれば、それに計算し直すと×4で1200円程度となる。一般的な飲み放題と、それほど価格の差はないわけだ。

数字を細かく割り算して表現して見せるのは、「コストは1日たった10円」というフレーズでおなじみの「フレーミング効果」という手法。2時間1200円のワイン飲み放題と聞くと大して安いと感じないが、30分で300円なら心が動く。

さらに、飲み放題の時間が短く、筆者のように数を稼ごうとすると1杯当たりの量が減るため、ワイン全体の減りもそう多くはないのではないか。お客にあまり量を飲ませることなく、一定の満足度を与えることができる仕掛けとすれば成功かもしれない。

損得を考えると大事なのは、食も酒も適量を適価で楽しむという、しごくまっとうなことなのだろう。「お代は同じです、好きなだけどうぞ」と聞いても元を取ろうと考えず、品格のある酔客を目指すのが、結局自分にとっても幸せなことかもしれない。

松崎 のり子 消費経済ジャーナリスト

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まつざき のりこ / Noriko Matsuzaki

20年以上にわたり『レタスクラブ』『レタスクラブお金の本』『マネープラス』などのマネー記事を取材・編集。家電は買ったことがなく(すべて誕生日にプレゼントしてもらう)、食卓はつねに白いものメイン(モヤシ、ちくわなど)。「貯めるのが好きなわけではない、使うのが嫌いなだけ」というモットーも手伝い、5年間で1000万円の貯蓄をラクラク達成。「節約愛好家 激★やす子」のペンネームで節約アイデアも研究・紹介している。著書に『お金の常識が変わる 貯まる技術』(総合法令出版)、『「3足1000円」の靴下を買う人は一生お金が貯まらない』(講談社)、『定年後でもちゃっかり増えるお金術』(講談社)。
【消費経済リサーチルーム】

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