所有者不明の不動産に困惑する行政側の悲鳴

空き家の取り壊しひとつで四苦八苦

手つかずになり、つたに覆われた空き家。今後は所有者が見つからないケースも考えられるという=10月、福井県越前町

3年前にがんで亡くなった父の遺言は「土地の相続を頼む」。ただ、福井市の30代男性は、どこにその土地があるのかも知らなかった。

父の死後、市役所に問い合わせると20カ所ほどあった。ほとんどが山林。1筆1500平方メートルや30平方メートルなど、大小さまざま計約7千平方メートル。登記簿を見ると、曽祖父と高祖父、高祖父の父が所有者になっていた。抵当権が設定されている土地もあり驚いた。

親族10人ほどが法定相続人で、会ったことがない人もいた。電話で連絡し、相続を放棄する証明書に判を押してもらった。1年かけて土地は自分のものになった。

しかし、どの土地へも車で数十分かかるため、いまだに行ったことはない。「正確な場所や、土地の境界はさっぱり分からない」。有効な活用法があるわけでもなく、日々の暮らしに支障はないので、そのままにしている。

所有者が分からない土地は九州を上回る面積

不動産の権利部分の登記は義務ではなく、亡くなった人が所有者になっていることは珍しくない。民間有識者でつくる所有者不明土地問題研究会は、所有者が分からない土地が全国で約410万ヘクタールに上るとの推計を公表。九州を上回る面積で、土地の筆数では全体の2割に当たる。2040年には720万ヘクタールに達する可能性があるという。

問題を顕在化させたのは、東日本大震災だ。原発事故に伴う除染廃棄物を保管する福島県の中間貯蔵施設予定地では、地権者約2400人の半数の行方が分からず、現時点で国が確保できた用地は約4割。住宅などの高台移転も円滑に進まず、復興の足かせになっている。福井県土地家屋調査士会の小竹浩二副会長(53)は「公共工事や災害復旧が滞るケースが今後出てくる可能性がある」と危ぐする。

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