ほぼ日、上場初の「株主ミーティング」の全貌 計8時間半、講演会や質問会も開催

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「生活のたのしみ展」の様子を写真で説明するコーナー。限定グッズも販売されていた(記者撮影)

そして引き合いに出したのは、11月から六本木ヒルズの屋外で開催している期間限定の実店舗「生活のたのしみ展」だ。

「急遽アルバイトが50人必要になった。募集したら300人応募があった。仕事を休んででも来たいと言う。そこで全員面接した。そうしたら全員よかった。ほぼ日の行動指針を見事によくわかっている。それで150人採用した。皆、大活躍をしてくれた。コーチングのプロ、レジ打ちのプロ、イベントの経験者らが、内側からほぼ日に接したかったのだと集まってきてくれた。それで『楽しそうでいいね』と言われるイベントになった」と例示。「そういう組織(=目を輝かせて楽しく仕事をする組織)がいい具合に出来上がってきているな、と思っている」と糸井代表は目を輝かせた。

目標株価については「発言を遠慮する」

別の株主が今後の株価目標を聞くと、糸井代表は「そういう目標を立てるような考え方で経営していないので発言を遠慮する」ときっぱり。株主が「(総会に)緊張感がないよ」と続けると、「緊張感はあるが、こういう個性なのです」と応じた。

新発売の「ほぼ日5年手帳」。同じ月日に5年分の行が並ぶ(記者撮影)

1948年11月10日生まれの糸井代表は、現在69歳。今後どこまで経営に携わるのかという質問には、「私がいなくなると会社の個性が変わるかもしれないが、面白い会社であるという点は残る」とした。さらに今後の経営方針について聞かれると、糸井代表は「一番良い部分を伸ばしていく。株価や売上高を目標にするとずれてしまう(から目標にしない)。世界的な企業になるのだと言わずして世界的になるのが一番いいことなので。言わないからといって拡大や成長をしたくないわけではない」と糸井流の言い回しで応じた。

その後議案を賛成多数で可決。新任取締役の河野通和氏(中央公論社出身。新潮社の元「考える人」編集長)や新任社外取締役の塚越隆行氏(ウォルト・ディズニー・ジャパンの元エグゼクティブ・プロデューサーで円谷プロダクション社長)を紹介し、上場後初めての株主総会は1時間足らずで終わった。

2時間のランチタイムを挟み、午後1時からは岩井克人・東京大学名誉教授の講演会を開催。糸井代表は岩井氏の著書『会社は誰のものか』(2005年、平凡社刊)に感銘を受けて上場するに至ったと持ち上げ、岩井教授は「講演は基本的に断っているが、ほぼ日は自分が考えている(理想的な)会社の代表と思っている」と二つ返事で受けた経緯を説明。そして「会社は株主のものではない。株主はご主人様ではない」と持論を展開した。

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