カルビーがクレームを再購入につなげる秘密 「ご指摘」か「ご相談」か見極められますか?

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お客様が気軽にお問い合わせいただける対応力を磨いていくことも、お客様相談室の使命であると考えています。また、こうした貴重なご相談に対しても、真摯な姿勢で向き合うことが大切です。

クレーム客をファンに変える

お客様の声は、非常に耳が痛い内容であることもあります。しかし、期待をしているからこそ、ご指摘をくださっているのです。その声にお応えすることが何よりも重要です。

『カルビーお客様相談室 クレーム客をファンに変える仕組み』(書影をクリックすると、アマゾンのサイトにジャンプします)

先ほど例にあげた「かっぱえびせん」のお客様の声は、その後の企業活動につながる貴重なご意見でした。

お客様の「塩分を減らしてほしい」という声から、私たちお客様相談室は「本当にしょっぱいと感じている」と、「しょっぱくは感じないけど塩分を気にする年齢だ」という2つの真意を引き出し、「減塩のかっぱえびせんを発売してはどうか」と担当部署へ提案しました。

日頃から社内一丸となってお客様対応への姿勢を共有していたことも手伝って、それがきっかけとなり商品・開発担当者も検討を始め、その後、マーケティングリサーチ、テスト販売を重ねました。

そして、減塩要望の声が増えだした2014年度からおよそ2年半後の2016年9月に、「かっぱえびせん塩分50%カット」が全国発売となりました。

その後も、「しょっぱい」「塩分を減らして」とご意見いただいたお客様に発売した商品や今後の試作品サンプルをお送りし、ご意見を直接いただく取り組みも実施しました。お客様からは、

「うす味なので、いくらでも食べられます」「あっさりとした味で、とっても美味しい」「こんな商品を待っていました! 発売されて嬉しいです」

など、嬉しいご感想を多くいただきました。

すべてのお客様の声が新商品につながるわけではありませんが、お客様の声を、具体的なアクションに結びつけることが本当の意味でのお客様目線であると考えています。

そして、このような積み重ねが、「お客様」が「顧客」に、「顧客」が「ファン」に変わる大きなターニングポイントになるのではないでしょうか。

特にご指摘をくださるお客様の最初の心情は、ネガティブであることがほとんどです。だからこそ、ご指摘の1つひとつに対して真摯に対応し、信頼を得てファンを増やせば、それが結果として安定した経営にもつながると思います。

カルビーお客様相談室
かるびーおきゃくさまそうだんしつ

1995年、広報室内に創設。その後、その優先課題に対応しながらCRMグループ、営業本部、総合企画本部と所属が変遷してきた。2014年、新設の「コーポレート・コミュニケーション本部」内に組織され、お客様とのダイレクトコミュニケーションを司る部署として現在に至る。「地域お客様相談室」は2000年に全国7支店に設置。本社マネジメントではなく支店長直下の組織として、本社と連携し「より丁寧で洩れのないお客様対応」の実現を目指している。

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