なぜか中国にモノ申せない韓国の「恐中症」 心配性な韓国、「通貨スワップ」延長の舞台裏

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この騒動に、ロッテも巻き込まれたという見方もあった。THAAD配備の土地を提供したロッテは、中国に進出していたロッテマートに税務調査などが繰り返され、112店舗中87店舗が営業停止に追い込まれた。

結局、去る9月には中国からの全面撤収が決定したが、「THAAD配備による韓中関係で、実は得をしたのはロッテではないかと言われています。この葛藤の前からすでにロットマートはかなり苦戦していて、撤収は時間の問題とも言われていました。普通に撤収していれば企業イメージの低下は必至でしたが、韓中葛藤で撤収の名目ができましたからね」(韓国全国紙記者)

ソウルのロッテ免税店の入り口には11月中のセールの様子が告知されていた。(筆者撮影)

「チョン・ジヒョン広告が再び掲げられ、韓流が久しぶりに笑った」(朝鮮日報11月13日)11月11日、上海で開かれた中国最大のオンラインショッピングイベント「光棍節(こうこんせつ)」の模様は韓国でも大々的に報じられた。

顔認識や仮想フィッティングルーム、オン・オフライン、携帯、AIの融合、ハリウッドスター登場などなど話題に事欠かなかったこともあるが、なにより韓国企業が特需に沸いたためだった。韓国の化粧品の老舗「アモーレパシフィック」は前年比で53%増の3億8700万元(約65億円)を売り上げたという。

「光棍節」は、中国企業「アリババ」が2009年、光棍=「独身者」の日といわれるこの日に彼らを対象にしたセールイベントを行ったのが始まりだ。以来、毎年爆発的な売り上げを叩きだし、今年はおよそ1682億元(日本円で約2,87兆円)を売り上げたといわれる。ちなみにチョン・ジヒョンは映画『猟奇的な彼女』(韓国で2001年、日本では2003年公開)に主演した人気女優で、中国ではドラマ『星から来たあなた』(2013~2014年)で一躍、韓流スターの仲間入りをしている。

この「光棍節」の翌週からは、まるで「解禁」にでもなったように、「THAAD葛藤解けた‥流通業界 遊客(中国人観光客)お迎え競争」(聯合ニュース11月13日)「年末年始には中国人観光客がたくさん来ますねえ」(朝鮮日報同日)と弾むような報道があふれ出た。

米国に隙は見せられない

韓中関係が好転した背景には、10月31日に両国政府がホームページにアップした関係改善に至った合意があるといわれる。

「両国は7月頃から水面下で交渉を重ねていて、この合意に至った鍵は韓国が中国へ明らかにした『3不原則』だとみられています」(韓国の全国紙記者)「3不原則」は、「THAADの追加配備を検討しない」、「米国のミサイル防衛(MD)体系に参与しない」、「韓日米3国の対北朝鮮協力体勢を軍事同盟に発展させない」だ。11月11日には文在寅(ムンジェイン)大統領がアジア太平洋経済協力会議(APEC)で習近平国家主席と会談し、「THAAD葛藤終止符、韓中関係新しい出発」(ソウル新聞11月12日)と報道され、文大統領が12月に訪中することも発表された。

また、続く13日、東南アジア諸国連合(ASEAN)で李克強首相とは「両国の交流協力が早期に正常軌道に回帰できるよう最善を尽くすことで合意」(ハンギョレ新聞11月14日)し、「ようやく韓中関係に雪解けが訪れた」(前出、記者)雰囲気が韓国に広まった。

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