会社員の「副業願望」を軽く見てはいけない ついに厚労省も容認に動き出す

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最初は気軽にボランティア感覚であったかもしれませんが、週に3~4時間を別の会社で仕事するとなれば責任もありますので、それなりの対価を求めたくなるのが当たり前。その気持ちをどのように処理するのか? 悩んでいたタイミングに兼業・副業が容認されそうなニュースを聞いたのです。自分の会社が早く、就業規則を変えることを心待ちにしていることでしょう。

このように、副業・兼業はやりたくてもできないのが実情でした。その理由は会社が許さないから。中小企業庁による全国調査でも約85%の企業が副業や兼業を認めていません。ただし、会社が就業規則等で、社員の副業を全面的に禁止することは、法律上許されていません。社員は、会社との雇用契約によって定められた勤務時間にのみ労務に服するのが原則であり、就業時間以外は社員おのおのが私生活で自由に使うことができる時間だからです。勤務時間以外は自由であり、副業・兼業も問題ないはず。

ところが就業規則で巧みに「やってはいけない」ように縛りが設けられていることで、認められていないと認識されてしまうのです。その縛りとは本業に影響があるとか、会社に著しい損害を及ぼす可能性がある仕事はダメとするといったことです。この縛りの解釈で大抵の人は兼業・副業することは避けようと考えてしまうわけです。まさに自由に働くことに対する岩盤規制が行われていたのです。これでは、副業が広がりようがないのは明らか。取材していても、副業・兼業をして有意義な時間を過ごしている人は例外的な存在。ないしは、就業規則を守らないで働く内緒の行為でしかありませんでした。

若手社員で兼業・副業の関心が高まっている

でも、大企業の社員を中心に状況が変わりつつあるようです。毎日新聞の調査によると、兼業・副業を認めない企業に魅力を感じない正社員が過半数とのこと。

さらに取材していくと、若手社員で兼業・副業の関心が急激に高まっていることがわかってきました。たとえば、取材した専門商社に勤めるSさん(27歳)は社会人経験を通じてマーケティングのノウハウをそれなりに備えています。Sさんの会社は兼業・副業を容認しており、これまで申請する社員は少なかったものの、Sさんは会社に申請をして地方の食品メーカーで新商品の販売支援をすることにしました。

どうして申請をしたのか? 理由は3つありました。1つ目が環境の変化。職場は働き方改革を進めており、残業が限りなくゼロに近い状態。兼業・副業する時間を確保しやすくなったのです。そして、2つ目は将来のために役立つと思ったから。現在の若手社員は定年まで同じ会社で働き続けるとは思っていません。兼業・副業で(社会で)自分がどのような位置づけにいるのかを、把握したいのです。そして、3つ目は人に感謝されたいという願望を満たしたいから。普段の職場では当たり前のことをしても、副業では周囲から「これはすばらしい」と称えられるような体験になることがあります。

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