復活シビック「予想裏切る好発進」が示す意味 「ホンダらしさ」の体現が呼んだ懐古と新鮮

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コーナーが迫ってきたのでステアリングを切る。ロールはほとんど発生せず、低いノーズがすっと真横に動き、そのまま安定した姿勢で駆け抜けていく。この感触もまた、あの頃のホンダ車に近いものだった。

当時のホンダ車はその代わり、サスペンションのストロークは短く、荒れた路面のコーナリングでは横っ飛びすることもあった。この点について新型シビックは大幅に進歩していた。乗り心地はこのクラスの日本車としてはかなりしなやかで、凹凸が目立つ路面でもサスペンションが自在に動き、粘り強いグリップを実現していた。ボディ剛性も強固そのものだった。

続いてハッチバックMT仕様に乗った。スタイリングはセダンと似ている。セダンがハッチバックに近づいたともいえるが、ホイールベースも同じ2700mmだし、共通部分を増やしてもよいのではないかと思った。

足が組めるほどではないが、このクラスのハッチバックでは十分な空間を持つ(筆者撮影)

しかし2台を並べると車体後部が130mm短く、キャビンが台形に近いことがわかる。エンジニアに聞くと、短いボディで十分な荷室容積を確保するために、後席の位置もセダンより少し前にセットしたという。

確かに後席に座ると、このクラスのハッチバックでは十分な空間を持つものの、足が組めるほどではなかった。荷室容積はセダンの519Lに対してハッチバックは420Lになっている。

かつてのホンダ車の創意工夫を取り戻してきている

左右方向に引き出すタイプのトノカバー(筆者撮影)

個人的に興味深かったのは荷室内部を隠すトノカバーが、ゲートと一体で跳ね上がる方式でも、奥から引き出す方式でもなく、左右方向に引き出すタイプだったこと。世界初だそうだ。かつてのホンダ車で何度も目にした創意工夫を取り戻してきているようで好ましい。

エンジンはハイオクガソリン仕様になっており、最高出力はセダンの127kW(173馬力)に対して134kW(182馬力)という性能だ。

確実なタッチのシフトレバーを操って走り始めると、環境対応型エンジンの悪癖の1つである回転落ちの遅さが気になったものの、エンジンはセダンより加速感も音も少し活発。それをダイレクトな反応とともに味わえるMTはやはり独特の楽しさがある。ただロードノイズはセダンより気になった。

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