あのサイゼリヤ、新業態「500円パスタ」の正体 「テイクアウトできるスパゲッティ」の魅力

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ちょい飲みやディナーのために利用できるスペースとして設定(筆者撮影)

なお、男性客50%という数字が意味しているように、女性目線を意識した結果、男性が利用しにくい店になってしまった、というわけでもないようだ。芝浦シーバンス店に関しては、エントランスに近いフロアでは女性に入店してもらいやすいよう、明るく開放的なインテリアとしているが、店内を進むと、実は奥の間が。こちらはブラウン系で照明もやや落とし、落ち着く雰囲気を醸し出している。観察したところ、心なしか店頭に近い場所より男性が多く見受けられる。もっとも、特に女性向け、男性向けと意識したわけではないらしい。

「アルコールも提供しているので、奥の部屋はちょい飲みやディナーのために利用できるスペースとして設定しています」(千代川氏)

また、普通サイズのパスタにサラダ、ドリンク(お変わり自由)のセットで500円だが、スパゲッティの量を2倍にしたダブルセットは600円と、男性でも安い価格で、満足できる量を食べられる。

今の飲食業界のキーワードをバランスよく取り入れて

スパゲッティマリアーノについて千代川氏は、「今期中(2018年8月まで)に2ケタを目指し、最終的には3ケタを目指す。ライバルはサイゼリヤです」(千代川氏)と語る。これは同社にしてみれば当然のことだそうだ。そもそも、10年ほど前、サイゼリヤが全国に700店舗を突破した頃に「第2、第3の柱が必要だ」という方針から新業態の模索が始まったためだ。

既存チェーンのライバルとなるにはまだ遠い道のりだが、新業態を始めたことによるメリットはすでに出始めているという。メニューやオペレーションに関するノウハウをお互いに持ち寄り、ブラッシュアップできるためだ。

「全国1000店舗あるサイゼリヤに対し、マリアーノは小回りが利き、いろいろと新しいことにトライできる。実際、スパゲッティの新しい調理法をフィードバックし、サイゼリヤでも2017年初頭から新しい方法によるスパゲッティを提供しています」(千代川氏)

女性目線、中食、ヘルシー、ワンコインと、今の飲食業界のキーワードをバランスよく取り入れながらスタートを切った同店。まずは目標の2ケタ台の展開まで、安定した運営を続けていけるかが勝負となる。

圓岡 志麻 フリーライター

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まるおか しま / Shima Maruoka

1996年東京都立大学人文学部史学科を卒業。トラック・物流業界誌出版社での記者5年を経てフリーに。得意分野は健康・美容、人物、企業取材など。最近では食関連の仕事が増える一方、世の多くの女性と共通の課題に立ち向かっては挫折する日々。contact:linkedin Shima Maruoka

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