沖縄は中国と北朝鮮の脅威にさらされている 現地取材で考えさせられた「沖縄防衛」の課題

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八重山漁業協同組合の人々(筆者撮影)

北朝鮮は今夏、2度も日本列島を飛び越える弾道ミサイルを発射した。日本国民は本来であれば、日本方面を狙った度重なる北朝鮮の弾道ミサイルの発射を「事実上の宣戦布告」とみなすほど、深刻に受け止めて防衛力の強化を急がなければならないはずだ。

しかし、国民レベルでの国防論議は依然、希薄といえる。現実には、多くの国内メディアが横綱日馬富士の暴行問題といった「コップの中の嵐」にうつつを抜かしている。

百歩譲って、確かに北朝鮮の弾道ミサイルは何度も日本上空を飛び越え、結果として太平洋上に落下しただけだといえるのかもしれない。しかし、それでも、日本の国防をめぐっては、もっと現実的に直接、脅威がじわじわと押し寄せている場所がある。

那覇基地にある旧帝国海軍の砲台(筆者撮影)

それは沖縄だ。中国が海と空からじわじわと既成事実を積み重ねる「サラミ戦術」のごとく、日本の領土、領空に迫ってきている。

筆者は10月下旬、公益財団法人フォーリン・プレスセンター(FPCJ)のプレスツアーの一員として航空自衛隊那覇基地と石垣島を取材した。イギリスやドイツ、イタリア、シンガポールなどのメディアから9人が参加した。1泊2日の急ぎ足の取材でも、十分に認識することができたのが、尖閣諸島をはじめとする日本近海での中国の高まる存在感だ。

南西諸島地域の空の砦

日本の南西諸島地域の「空の砦」となっているのが、空自の那覇基地だ。防衛省は、南西地域の防衛強化を目的に2016年1月末に那覇基地の第83航空隊を廃止し、第9航空団を新編した。航自としては51年ぶりの航空団新編だった。福岡県の築城(ついき)基地から第304飛行隊を移し、これまでのF15戦闘機20機からなる1個飛行隊を、計約40機の2個飛行隊に倍増した。南西地域唯一の戦闘機保有部隊となっている。

日本周辺の南の空では、中国の動きが一層活発化している。これに伴い、那覇基地の任務も厳しさを増している。鹿児島県の奄美大島周辺から沖縄県の尖閣諸島周辺までを管轄し、那覇基地に司令部を置く南西航空方面隊によるスクランブル(緊急発進)の数は、2016年度は803回に及び、全国4方面隊のうち7割近くを占める。中国が尖閣諸島上空を「防空識別圏(ADIZ)」に設定した2013年度と比べると、倍増した。

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