日本でボジョレーヌーボーが力を下げた理由 あえてワイン通を狙わない巻き返し策が始動

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ところが、日本におけるボジョレーヌーボーの盛り上がりは、かつてほどの勢いがない。直近ピークの2004年は約1250万本を輸入していたことから考えると、今の市場規模は半分程度になっている。「2010~2013年までは年8%程度の増加があったが、2013年以降は年6%程度の減少となっている」とジャン=マルク・ラフォン氏は言う。

ボジョレワイン実行委員会代表のジャン=マルク・ラフォン氏も来日する力の入れよう(写真:筆者撮影)

その大きな原因が「ワインの難しさ」だ。日本に浸透するにつれ、ワインはいわゆるアッパークラスの嗜好品へと向かってしまった。

上質なレストランで、うんちくを語りながら、ワインを楽しむ。料理とのマッチングを超えて、料理一皿ずつに適切なワインを合わせる(ペアリング)など、ワインは難しくなってしまった。それに一般的な顧客層が「引いて」しまい、結果的に一大イベントであるボジョレーヌーボーの解禁に、以前ほどの関心が沸かなくなるという悪循環が起きた。

若い一般層へのアプローチ

そこでボジョレワイン委員会では、今年は巻き返しの作戦に出た。それが20~30代と比較的若く、それもワインに詳しくない一般層をメインターゲットにするという戦略だ。

まず、毎年日本で開催してきた解禁イベントのスタート時刻を日付が変わった第3木曜日の深夜0時からではなく、当日正午からへ変更した。一部のコアなワインファンへのターゲットから、幅広い一般的な人々に届くようにした。

表参道の「Commune 2nd」で3日間「BEAUJOLAIS MATSURI」が開催された(写真:筆者撮影)

その解禁イベントも18日までの3日間にわたり、お得な価格で楽しめるポップアップバーや人気ヒップホップユニット「chelmico」によるライブ、HAPPFATのDJプレイなどで「ボジョレー祭り」として若者を中心に浸透を狙った。「四季のうつろいを愛で、旬の食材や季節ごとの行事を大切にする日本」で「祭り」が重要視されていることから、同じくボジョレーヌーボーの原点ともいえる「祭り」の精神に立ち返った。

ボジョレーヌーボーは世界的に過去66年にわたって毎年オリジナルデザインのポスターが発表されてきた。その日本向けのポスターは120超の応募作品から、24歳の若手アーティスト、MINAMI氏による作品が選出。イキイキとしたカラーリングで、みんなでワイワイ楽しみたい、20代女性らしいハッピーなメッセージのポスターとなっている。そんな委員会の試みもあって、ここ数年は大きく減少傾向にあった日本への出荷量は今年横ばいを保ち、昨年同様になる見通しだ。

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