子どもに教えたい「二重基準」を持つ重要性 自由な感性を失わずに、正答する方法

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【ステップ2】世の中の感性を知る(2つ目のスタンダード)

しかし、このまま子どもの独自の感性を大切にするだけでは、いつまでも正解に至らず、国語の点数に結びつかないばかりか、国語自体が嫌いになってしまう可能性もありますね。そこで、もう1つのスタンダード、世の中のスタンダードを学びます。

先生:「なるほどね、そう思ったわけだね。では、ここでもう1つ質問するよ。世の中の大半の人が選ぶとしたらどれを選ぶと思う?」

子ども:「……」

先生:「ゆっくり考えていいよ」

子ども:「2番……かな」

先生:「どうして2番だと思ったの?」

いかがですか。「世の中の大半の人が選ぶとしたらどれを選ぶと思う?」と聞かれると、子どもの意識が、世の中の一般の視点に移ります。すると、状況を客観的に見ることができるようになるのです。この方法は筆者が毎回、授業で実践してきた方法です。この方法で多くの子どもたちが、正解にたどり着けるのですから、不思議です。

国語の問題を解く目的は、正解を選ぶことなのですが、そのためのアプローチがまったく異なっていることがおわかりいただけたと思います。

まとめると次のようになります。

なぜその選択肢を選んだのかを言語化させる

1.まずは正解・不正解にこだわらずに、なぜその選択肢を選んだのかを言語化させる(選ばなかった選択肢の理由も言語化させる)

→選んだ理由については、特に否定はしない。選んだ理由を独自に持っていることが重要であり、正解しているか不正解となっているかは、この段階では、特に言わない。

2.「世の中一般の多くの人が選ぶとしたらどれを選ぶだろうか」と質問する

→視点が自分から世の中の多くの人に移ると、見方が変わり、別の選択肢を選ぶ場合が多い。そのときもなぜそれを選んだのかを言語化させる。

『子どもを叱り続ける人が知らない「5つの原則」』(書影をクリックすると、アマゾンのサイトにジャンプします)

3.ここで初めて、正解を言う。すると1と2のプロセスを経ているため、子どもは自分の感性を否定はされておらず、また世の中一般の考えにもフォーカスできるので、安心して正解を受け入れることができる

以上のプロセスを経ると、子どもの中に、正のダブルスタンダードが出来上がります。これができると、自分の感性を大切にしつつ、世の中の人たちの考え方も理解し、受け入れることができます。

沼田さんの息子さんはすばらしい感性をお持ちなので、それを大切にしつつ、もう1つのスタンダードである世の中全般の人の感性も知る場を国語の学習を通じて、ぜひ作ってみてください。

石田 勝紀 教育デザインラボ代表理事、教育評論家

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いしだ かつのり / Katsunori Ishida

1968年横浜生まれ。20歳で起業し、学習塾を創業。4000人以上の生徒に直接指導。講演会やセミナーを含め、5万人以上を指導。現在は「日本から 勉強が嫌いな子を1人残らずなくしたい」と、Mama Cafe、執筆、講演を精力的に行う。国際経営学修士(MBA)、教育学修士。著書に『子ども手帳』『子どもを叱り続ける人が知らない「5つの原則」』、『子どもの自己肯定感を高める10の魔法のことば』ほか多数。

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