糖質制限論争は初期人類の食に答えがあった 近・現代人の糖質からの「独立戦争」に迫る

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要するに、糖質制限とは、糖質により損なわれた健康不調から脱却して、本来の健康を取り戻すための健康法・食事法であり、その一環として「体重が本来あるべき値に戻る」と考えるとわかりやすい。

ダイエット法は掃いて捨てるほどあるが、それらと比較すると、糖質制限の優位性は明らかだ。糖質制限は努力なしに簡単に行うことができ、糖質制限を続けている限り、体重が元に戻ることもメタボ腹になることもない。つまり、リバウンドがない。

糖質制限では高価なサプリメントは必要ないし、ハードなトレーニングや運動も必要ない。値段の高い食品を買い求めなくてもいいし、それどころか、コンビニで買える食品で今からでもすぐに始められるし、激安系居酒屋チェーン店でも完璧な糖質制限食が食べられる。油っこい揚げ物も食べていいし、糖質が含まれていないお酒なら健康を害さない範囲であればいくら飲んでもいい(糖質制限で肝機能が良くなるから)。

ダイエット法としてのハードルの低さにおいては、まさにこれより低いハードルは存在せず、お気楽さと容易さで他の追随を許さないのが糖質制限だ。

問題は、最後の「初期人類(先史人類)の姿」

なぜ、初期人類の研究者でもない私が初期人類について書こうと思ったのか。じつは糖質制限について考えていく上では、初期人類の食は避けて通れない問題だ。だから私は、初期人類についての本を手当たり次第に読んで勉強したが、次第に違和感を感じるようになった。後述するように、初期人類は「糖質摂取ゼロ」生活だったのに、糖質ゼロでは絶対に起こりえない生理現象を大前提にして書いてあるからだ。

『炭水化物が人類を滅ぼす【最終解答編】植物vs.ヒトの全人類史』(光文社)。書影をクリックするとアマゾンのサイトにジャンプします

要するに、糖質を摂取している現代人と、糖質摂取ゼロの初期人類は、全く別物なのだが、過去の初期人類に関する研究書にはこういうおかしな部分が少なくないのである。

これに気が付くのは、「糖質制限をしていて、かつ、初期人類についての知識が(多少)ある人間」だけである。となれば、私がしゃしゃり出てもいいだろう。この2つの条件を(一応)満たしているのは、現時点では、世界広しといえども私くらいのものだからだ(……たぶん)。

今なら、大風呂敷を広げて大胆な仮説を発表しても、「糖質を食べている初期人類専門家」から反論を食うことはそうそうないだろう。

糖質制限をしている人しか知らない事実に基づいて書いているからだ。とはいっても、グズグズしていたら糖質制限はさらに広まり、「糖質制限をしている本物の研究者」が登場しかねない。そうなったら手遅れだ。

夏井 睦 医師

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なつい まこと / Makoto Natui

1957年秋田県生まれ。「なつい キズとやけどのクリニック」(東京都江東区)院長。東北大学医学部卒業。東北大学医学部附属病院を経て、相澤病院、石岡第一病院、練馬光が丘病院で「傷の治療センター」長。2001年、消毒とガーゼによる治療撲滅をかかげ、インターネットサイト「新しい創傷治療」を開設。湿潤治療の創始者として、また糖質セイゲニストとして、誤った常識を非常識に変えるべく発信を続けている。趣味はピアノ演奏。著書に『傷はぜったい消毒するな』『炭水化物が人類を滅ぼす』(以上、光文社新書)、『キズ・ヤケドは消毒してはいけない』(主婦の友社)、『これからの創傷治療』(医学書院)、『創傷治療の常識非常識』(三輪書店)など多数。

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