都心上空飛ぶ羽田便、落下物・騒音に募る不安 2020年、都民が飛行機に悩まされる可能性も

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大田区民には、苦い記憶がある。2008年に一部の羽田発国内線は離陸ルートが変更され、大田区上空を初めて飛行するようになった。米軍横田基地の管理空域が一部返還されたためだ。高度は約2700メートルだったが、騒音を耳にした住民から区に苦情が殺到。ルート変更後、半年で200件超に上った。現在も1日80便超がこのルートを飛行する。

大田区在住で都心上空飛行の反対活動に携わる松島光男さんは、「騒音は経験してみないとわからない。しかも当時と今回とでは、飛行高度のレベルも便数も違う」と強く懸念する。

住民への説明会はパネル展示が主体

新飛行ルートの運用が始まる2020年には、東京五輪が開催され、訪日観光客4000万人の目標が掲げられている。国交省が昨年試算した発着枠拡大の経済効果は1都3県で年4800億円。しかし新ルート問題にかかわる大田区議の奈須利江氏は、「経済最優先で、羽田の国際化はなし崩し的に進められている」と嘆く。

国交省は2015年7月以降、飛行ルート下の各地域で説明会を行っている。これまで延べ1万3400人が来場。ただ、パネル展示が主体で、議論の場になっていない。反対意見も多く寄せられているが、着陸前の飛行高度を上げたり、離着陸回数を一部減らしたりするなどの微調整にとどまる。

「国交省としては、今さら反対されても大きく変えられないというのが本音だろう」(航空局OB)。国策として進めるのならば、せめて地元住民に対し、より一層説明責任を果たすべきではないだろうか。

中川 雅博 東洋経済 記者

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なかがわ まさひろ / Masahiro Nakagawa

神奈川県生まれ。東京外国語大学外国語学部英語専攻卒。在学中にアメリカ・カリフォルニア大学サンディエゴ校に留学。2012年、東洋経済新報社入社。担当領域はIT・ネット、広告、スタートアップ。グーグルやアマゾン、マイクロソフトなど海外企業も取材。これまでの担当業界は航空、自動車、ロボット、工作機械など。長めの休暇が取れるたびに、友人が住む海外の国を旅するのが趣味。宇多田ヒカルの音楽をこよなく愛する。

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