神鋼だけ?鉄鋼業界に求められる「一斉点検」 9年前に「業界ぐるみ」の改ざんが起きていた

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そのほかにもおよそ1カ月の間に、日本金属工業(現・日新製鋼)、不二越、大同特殊鋼、淀川製鋼所、三菱製鋼の子会社で検査データの改ざん・捏造やJIS規格違反が発覚した。

これら企業の多くはデータ捏造を行った原因について、「時間のかかる試験や検査を行うことによって生産性が落ちることを懸念した」「現場が生産性を優先した」などと説明していた。

行き過ぎた「生産性重視」

一連の事態が発覚したのはリーマンショック直前のタイミング。それまでの数年間は中国など新興国の台頭で世界的に鋼材需要が急増していた時期だった。そうした環境下で、日本の鉄鋼メーカーは「生産性重視」で販売拡大を競い合った。その結果、歪みとして表面化したのが一連の不正事案だった。

鉄鋼連盟は当時の会長である宗岡正二・新日鉄社長(現・新日鉄住金会長)が中心となり、2008年7月28日に再発防止に向け「品質保証体制強化に向けたガイドライン」を策定した。

ガイドラインではまず、教育冊子などを活用した法令順守(コンプライアンス)・品質保証に関する意識改革を求めた。また、品質保証部門や検査証明書発行部門を製造部門から独立させることや、ISO9001やJISなど第三者認証の取得、社内第三者による品質監査の強化などを盛り込んだ。

神戸製鋼所の本社。本社に品質監査機能が置かれたのは、昨年のデータ改ざん発覚後だった(撮影:ヒラオカスタジオ)

その後、同ガイドラインは2010年2月に意識「改革」から「徹底」に表現を変え、業界内の発生事案の情報共有化を盛り込むなど一部改訂して現在に至っている。

それにもかかわらず昨年6月に発覚したのが、神鋼の関連会社におけるステンレス製品の強度データ改ざんとJIS規格違反だった。そして、今年10月8日には神鋼本体のアルミ・銅事業部門で検査データ改ざん(顧客との仕様契約違反)の事実が公表された。その後、現在までに同社の鉄鋼や機械部門などの一部製品でも改ざんが発覚し、銅管子会社ではJIS認証の取り消しに発展している。改ざんが発覚した事業所の中には、2008年に不正が起きた日本高周波鋼業も含まれている。

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