諮問機関の「ノー」を覆す、ダム論争で露呈した河川行政“復古”の歪み

諮問機関の「ノー」を覆す、ダム論争で露呈した河川行政“復古”の歪み

諮問機関の「ノー」に河川行政が“宣戦布告”--。関西を舞台に河川整備のあり方をめぐり、官と民が真っ向から対立している。

発端は2007年8月、国土交通省近畿地方整備局(近畿地整)が大戸川ダム、川上ダムなど淀川水系4ダムの建設・再開発を盛り込んだ河川整備計画原案(原案)を策定したこと。原案は、民間人だけからなる諮問機関の淀川水系流域委員会(淀川流域委員会)がそれまでにまとめた「原則ダム中止」の意見とは正反対の内容だった。とりわけ、大戸川ダムに関しては、05年に近畿地整自らが「5ダム方針」で打ち出した建設凍結を引っ繰り返す180度の方針転換となった。

しかも、07年8月に発足した第三次淀川流域委員会(宮本博司委員長)は、今年4月に「現時点でのダム建設不適切」「原案の見直し・再提出を求める」中間意見書をまとめている。にもかかわらず、近畿地整は原案どおり4ダム建設をうたう河川整備計画案をこの6月に第定、7月には関係府県知事に提示したのである。

進む行政の河川法形骸化

1997年の河川法改正のポイントは、第1条で法の目的に、従来の治水・利水のみならず、「河川環境の整備・保全」を加え、第16条で河川整備計画案策定に際しては、「住民」や「学識経験者」などの意見を聞く規定を別項を設けている点にある。90年代、環境重視や地域の意見を反映した河川行政への転換を訴える長良川河口堰建設反対運動などが高揚し、河川行政は立ち往生。法改正にもその声が反映された。

だが、時が経つにつれて、河川行政はその立法精神を骨抜きする方向への“逆流”を強めている。

利根川、淀川など大きな河川水系ごとに学識経験者を集めて設ける諮問機関「流域委員会」の形骸化がその一例だ。流域委員会は不十分な審議で行政の決めたことを追認するだけの機関だとの批判は絶えない。流域委員会そのものが開かれない地域も少なくない。

淀川流域委員会はその中で希有な存在だ。審議、意見取りまとめを民で自主的に行う。地域住民が会場に入り、質問・意見書提出も自由。原則公開の議事内容は誰でも見られる。「学識経験者」を拡大解釈して、住民を委員に参画させるなど独自性も発揮。これが委員会の議論や意見に広がりをもたらしている。

取り組みの先進性から「淀川モデル」と高く評価される、その淀川流域委員会が度重なる真剣な審議を経て下した意見を、近畿地整が今回無造作に無視したことで、国交省の根本姿勢への疑念は膨らむ一方だ。

改正のもう一つの目玉、治水・利水優先から「環境の整備」も満たす河川行政への転換だった。この面でも行政に合格点は与えられない。

淀川流域委員会の主張は、仮にダムに治水効果があるにしても、「河川堤防の強化や土地利用なども含む流域対応」などダムなしの別オプションで代替できないか、ダム建設案と比較検討するのが不可欠というもの。その点でデータ提供や説明が不足しており、現時点で住民を納得させるだけのダム建設の緊急性・必要性を認められないから“原案差し戻し”と委員会は判断したわけだ。

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