日欧EPA「自動車関税を撤廃へ」の盲点

日本産食品の輸出拡大の期待もあるが…

「日本製の乗用車を売りやすくするため、日本が輸出の際にEU側からかけられる10%の関税を7年かけて引き下げ、8年目に撤廃します」

11月2日に開かれた「日EU経済連携協定(EPA)イベント」で語るのは、外務省国際法局経済条約課長の片平聡氏。日本と欧州連合(EU)の経済連携協定で、自動車の関税に対する展望に触れたものだ。

外務省
国際法局経済条約課長
片平聡氏

日欧EPA は2011年に始まった交渉準備作業から6年という年月を経て、2017年7月に大枠合意に至り、2018年中の署名と2019年中の発効を目指して、現在さらなる交渉が継続されている。これが実現すれば、世界の人口の8.6%、国内総生産(GDP)の3割弱を占める巨大な自由貿易圏が誕生することになる。

「自動車部品の92.1%のほか、日本産牛肉や茶、水産物等の輸出重点品目を加えた農林水産品、ワイン、ウイスキーなどの関税は即時撤廃します。地方の特産品の市場が拡大しますと、過疎化に悩む地域の活性化につながります」(片平氏)

では、日本のビジネスパーソンは、日欧EPAをどうとらえればいいのか?

「原産地証明」の不備で370億円の罰金も

日欧EPAで気をつけたいのは「原産地規則」と「原産地証明」だ。

トムソン・ロイター・ジャパン
ソリューションコンサルタント
箱田優子氏

現在でも輸出品を出荷する際には、当該国間の協定で定められた原産地規則を満たしていることを証明するが、今までは日本商工会議所がほとんどの企業の原産地証明書を発行してきた。ところが、日欧EPAでは「自己証明制度」が導入される可能性が高いために、原産地証明書は自社で発行しなければならなくなる。

「2011年にEUと韓国の間でFTAが発効されてから2年後に『検認』件数が大幅に増加しました。日欧EPAでも同様のことが予想されるので、企業は十分な備えが必要になってきます」と語るのは、トムソン・ロイター・ジャパン ソリューションコンサルタントの箱田優子氏。

「検認」とは、一言で言えば、輸入国税関による輸出者・生産者に対する情報提供の要請。FTAの増加・拡大により、検認件数の増加は避けられず、原産性の証明が適切に行われているか、根拠となる書面やデータ、計算が正しいかがこれまで以上に問われることになる。

ロジスティック
代表取締役
嶋正和氏

だが、「原産地証明の証拠書類の作成に自信のある企業は多くない」と指摘するのは、ロジスティック代表取締役の嶋正和氏。

「原産地証明の証拠書類作成は、担当社員の知識・努力などに依存している会社がほとんどで、その証明が正確かどうか企業組織として把握できていないのが現状です。仮に検認の際に原産地証明書の証拠書類に不備があると見なされた場合、関税削減相当額と合わせてペナルティが課されます」

検認の過去の事例を見ると、自動車メーカーは370億円、電気メーカーは70億円もの罰金が課せられている。

では、原産地証明書を自社で不備なく作成するにはどうすればいいのか、その体制づくりはどのようなものが望ましいのか――。

前出の3人も登壇したトムソン・ロイター・ジャパンの「日EU経済連携協定(EPA)イベント」の全容は以下の講演映像、プレゼン資料×4から無料で確認できる。日欧EPAのロードマップと、この先企業が取り組むべき課題がつまっている。