「自転車で国内一周」が台湾で大流行のワケ 新しい台湾旅スタイル「環島」のススメ

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寿峠を越えると、一面に真っ青な太平洋が望める(写真:一青 妙)

台湾では、年間数万人に達する人が、この環島を楽しんでいる。毎日台湾のあちこちで、多くのグループや個人が環島に挑戦しており、環島のために台湾が国をあげて整備した「環島1号線」を走っていると、自転車チームにすれ違ったり、追い抜かれたり、追い抜いたりと、環島の仲間たちで出会うことも多い。

台湾の人々もすっかり環島の光景に慣れっこになっていて、走っているとあちこちから”頑張れ”を意味する「加油!」の声がかかる。こうした声援は本当にありがたい。つらくてもうダメだとくじけそうになったとき、勇気づけられ、気持ちが奮い立たせられる。駅伝で送られる声援の意味が、やっと理解できた。

8泊9日の環島「多様性」体験

自転車での環島は、だいたい初心者から中級者は8~10日をかける。上級者になると6~7日で走りきる人もいる。私は、10月21日、台湾の西側の中部に位置する台中を出発し、反時計回りに、8泊9日かけての台湾一周「環島」を始めたのだった。

環島中の1日の動きは、だいたい、こんな感じだ。

朝6時起床。朝食後、準備体操を行い、出発。日々の走行距離は平均100キロメートル。およそ20キロメートルごとに休憩を挟み、再び走りだす。昼食後も同様に自転車に乗り、日が落ちる前にその日の目的地に到達する。夕食後は洗濯や翌日の準備を行い、布団に入れば瞬く間に眠り込み、また翌朝を迎える。

食べて、乗って、寝る。単純なことの繰り返しは、まるで学生時代に戻った気分になる。

台湾は、亜熱帯と熱帯の両方にまたがっている。出発地の台中はまだ亜熱帯地域。台中から彰化、雲林と進み、2日目に嘉義に入ると、北回帰線を超えて、熱帯入り。一気に熱気を帯びた空気が体にまとわりつき、周囲の植物も南の島らしく変化した。

穀倉地帯の中、風を切って走るのは気持ちがいい(写真:一青 妙)

嘉義から台南にかけては、台湾の一大穀倉地帯が広がっている。稲作の多くは2期作なので、両側に広がる水田には、ちょうど10月末から11月にかけて、収穫時期を迎える稲穂が重そうに首(こうべ)を垂れていた。

3日目に高雄から屏東に向かった。そして4日前に前述の寿峠越えとなった。環島のハイライトで、挫折して自転車から降りて押しながら坂を登る人も続出する。峠の途中で、あちこちに点在する多くの先住民の集落をみかける。台湾には現在、独自の文化を持つオーストロネシア系の流れをくむ16部族の先住民たちが暮らしているが、多くが南部や東部に生活しており、台北では見る機会のない彼らの文化を目の当たりにできることはありがたい。

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