決戦直前!ドイツの議会選挙の結果を占う 景気・経済観測(欧州)

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加えて、さらなる統合強化には、憲法改正や条約改正が必要との見方が一般的で、憲法裁判所からの賛同も得られない可能性が高い。政権の組み合わせのいかんを問わず、統合プロセスが一気に加速することはないだろう。

この春のキプロス救済では、議会選挙を控えたドイツ議会が銀行救済や海外富裕層の救済に批判的な世論に配慮し、支援額に上限を設定したことで、預金者のベイルイン(損失負担)といった異例の政策措置が検討されることになった。選挙前はドイツのユーロ危機対応が内向き志向になり、納税者の負担を最小限にとどめ、国民の反発が予想される政策決定を先送りする可能性が高まる。

議会選挙の終了後は停滞していた政策が前進するとの期待もあるが、むしろ選挙前に先送りしていたさまざまな問題についての議論が再開することで、利害関係者間の対立が表面化しやすくなる点に注意が必要だろう。

具体的には、ギリシャの3次支援、キプロスの支援見直し協議、アイルランド/ポルトガルの市場復帰に向けた部分的な支援、スロベニアの銀行支援、銀行同盟での条約改正の有無など。また、ECBの新たな国債購入策(OMT)に対する憲法裁判所の合憲性判断も選挙後に公表される。
 

田中 理 第一生命経済研究所 主席エコノミスト

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たなか おさむ / Osamu Tanaka

慶応義塾大学卒。青山学院大学修士(経済学)、米バージニア大学修士(経済学・統計学)。日本総合研究所、日本経済研究センター、モルガン・スタンレー・ディーン・ウィッター証券(現モルガン・スタンレーMUFG証券)にて日、米、欧の経済分析を担当。2009年11月から第一生命経済研究所にて主に欧州経済を担当。

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